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第44回

天草のエアラインの奇跡

天草のエアラインの奇跡

『天草エアラインの奇跡。』
鳥海 高太朗 著/集英社 刊/1,400円(税別)

熊本の日本一小さい航空会社
V字回復の変革力の源とは?

熊本県西、有明海の島々からなる天草市・天草空港を拠点に、天草-熊本、天草-福岡、熊本-大阪(伊丹)の3路線を、たった1機の飛行機で運航している「天草エアライン」。
日本国内で定期運航を行う中ではもっとも小さい航空会社だ。本書では、同社が倒産寸前の苦境から5年連続黒字のV字回復を果たすまでの軌跡が描かれている。
天草エアラインの誕生により、福岡から天草まで陸路で約4~5時間かかるところ、約35分で移動できるようになった。その利便性もあり順風満帆のスタートを切ったが、3年目を迎えた頃から右肩下がりで業績が悪化。そんな中、JAL整備部門出身の奥島透氏が社長に就任し、経営再建の立役者となった。
本書で印象的なのは、奥島氏の社内改革に取り組むその姿勢だ。大手航空会社からの「天下り」特有の尊大さや、社員と距離をおいたりすることは、まったく見られなかったようだ。奥島氏は進んで現場におもむき、自ら機内清掃や手荷物の積み下ろしなどの実務を行った。余裕があれば他の業務を手伝い全体の効率を上げる「マルチタスク」を自ら率先して示し、社員に浸透させたのだ。
社長のそうした行動によって、全社員のモチベーションも高まり、その結果、8期ぶりに黒字転換、そして5年連続の黒字を成し遂げた。テレビの公募企画で選ばれたイルカのデザインの機体も注目を集め、知名度や好感度がさらに高まっている。
先日の熊本地震で同社の地元は甚大な被害を被った。この小さな航空会社が起こした「奇跡」が、復興に与える影響は小さくないのではないだろうか。

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