政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


髙梨 智弘
公認会計士、自治医科大学客員教授、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、日本総合研究所フェロー、日本イノベーション融合学会理事長

多様な知を結合することが、激変する時代を生き残るカギと言われる。特にインターネットと周辺技術の飛躍的な進歩がもたらした社会は、IOT・AI・ビッグデータを活用した従来の延長線上で戦略を考えるのではなく、新しい時代の要請に合わせたイノベーションが求められている。

世界で脚光を浴びる破壊的イノベーションだけがイノベーションではない。技術革新、プロダクトイノベション、プロセスイノベーション、ビジネスモデルイノベーション、日本的経営イノベーション等あらゆる場面のイノベーションが注目を浴びている。

とりわけ中小企業におけるイノベーションが日本復活の鍵を握っている。こう考えると、「人の意識、組織のDNAを変える」ことが重要となる。なぜなら、従来の考え方に囚われないあらゆる企業内外の多様な知を活用する意識改革が先だからである。

平成18年内閣府報告書では、イノベーションには3つのイノベーションの死の谷があると指摘していた。従来のイノベーションにおける、①商品開発が簡単にできない「第1の死の谷」と、商品が開発ができても事業化が難しい「第2の死の谷」の二つの死の谷に加えて、第3の死の谷があるという。

中国製品等安い商品の台頭等の従来の要因に加えて、インターネットの進化を取り込んだ新らたなビジネスの誕生、ネットセールスの急激な増加やビッグデータの活用等により企業間競争が激化し、事業化しても生き残りが難しく競争優位に立てないという「第3の死の谷」の存在である。

では、中小企業は、あらゆる手を尽くして、この第3の死の谷を渡りきれば良いのであろうか?実態は、第1の死の谷に行き着いていない企業がほとんどのように見える。経営資源の不足する中小企業には酷な要求にも見える。

つまり、イノベーションには第4の死の谷がある。イノベーションなんて、中小企業の「我々には無理だ!」、「そんな高度な技術なんてない!」、「目の前の資金もないのに!」、「担当する人がいない!」等々、指折り数えて多くの中小企業が一歩前に進むことができない。

つまり、イノベーションにチャレンジできない体質がはびこっていた。それは、古い体質の組織や古いリーダーシップに対する現代的課題でもある。これこそが、「イノベーションを起こすか、起こさないかの経営者や組織の意識における第4の死の谷」である。

それは、第1の死の谷の前に存在する。それらを解決する「新しいイノベーション経営のプロセス」を開発し普及・導入する時が来ている。