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産業の課題と展望

グローバル・ニッチトップ企業育成を

平成24年度ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)がまとまった。わが国のものづくりを取り巻く環境は厳しい。国内外の設備投資が伸び悩む中、グローバル化に出遅れている現況を捉えている。また、3Dプリンタの可能性など118に及ぶコラムを意欲的に載せている。今回は白書の概要を紹介する。

第1章 わが国ものづくり産業が直面する課題と展望
(1)現状認識:日本経済を支えてきた製造業の揺らぎ
■製造業は、国内雇用や貿易立国日本を支えてきた日本経済の基幹産業。80年代に「ジャパン・アズ・ナンバー1」と言われ、世界を制するほどの抜群の競争力を有した。
しかし、現在では、円高是正やデフレ脱却に対する期待感を背景に企業の業況は足下では改善しているものの、長らく続いた円高やものづくりを取り巻く内外の環境の変化等により、エレクトロニクス(電気機器)産業を中心に輸出力は低下、2012年の貿易収支は鉱物性燃料(天然ガスや原油等)の輸入増加等も背景に過去最大となる6.9兆円の赤字を記録。
■自動車産業を中心に製造業の海外生産は拡大するも、国内生産は頭打ち。特にエレクトロニクス産業は国内だけでなく、海外での設備投資も伸び悩み。中長期的な競争力低下は否めない。
また、企業の海外展開は多様化。従来の量産拠点ばかりでなく、研究開発やデザイン等が海外シフトする可能性。今後、競争力の源泉を担う機能が海外にシフトしないか注視することが必要。
(2)課題と方向性:
①企業の競争力を最大限引き出す「立地環境の整備」が必要
■為替、エネルギー制約、経済連携の遅れ等により国内での“ものづくり”は諸外国と比べて割高であり、規制等が足かせとなっている。主要国と比較した場合、日本は技術力や産業集積は優れるも立地環境等は劣位。
■こうした国内の高コスト構造の是正や規制等の見直し、TPP やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、日中韓FTA等の経済連携の実現が急務。その結果、立地環境の大幅改善を通じて、企業が世界で一番活躍しやすい国を目指すことが必要。
②企業に内在する競争力の源泉である「技術・設備の維持・強化」が必要
■人体に例えると、技術は「頭脳」、設備は「筋肉」に該当し、これらが競争力の源泉。企業の研究開発の量や質は低下。質の高い技術であってもビジネスに結び付かない例もある。
 また、国内での設備投資が減少(90年比約3割減)。維持・補修等により設備の優位性を保つ業種がある一方で、新興国によるスピード感ある投資により劣位する業種あり。
■まずは研究開発投資や、設備投資(国内のマザー機能(生産技術の成熟化や新製品開発を担う拠点等)強化に資するもの)を促す環境整備が必要。また、顧客・社会ニーズを十分に踏まえた研究・製品開発の促進や、優れた技術がビジネスにつながるような規制の合理化・整備が重要。
③企業が自らの競争力を発揮する「ビジネスモデルの変革」が必要
■かつての「高性能・高品質製品であれば売れる」というビジネスモデルに限界。引き続き、高いシェアを有し、世界にとってなくてはならない企業群が日本に存在する一方で、新興国企業の参入により、コモディティ化が進んだ製品分野では価格競争に陥りシェアを落とす傾向)。規模の経済が求められるところ、日本は同一業種内に企業数が多く、競争力が分散。国内で消耗戦を行っている状況。
■コモディティ化が進んだ分野では、自前主義に拘ることなく、外部資源を積極的に活用(生産委託)するようなビジネスモデルへの転換を行うか、世界と競争できる事業規模を確保するため、再編等を通じた“グローバルメジャー”企業を目指すべき。
 さらには、規模での競争に陥らないような、自らの技術を活かし勝てる事業領域を選択することによって、高い競争力を有する“グローバルニッチトップ”企業を創出・育成することが重要。
④非効率な経営資源を有効活用し競争力を高める「新陳代謝の促進」が必要
■日本の開廃業率は欧米と比較して低水準。多くの企業で、非効率事業を抱え込んだまま、人材や設備等の経営資源が有効活用されていない状況。産業の新陳代謝が進まず。
■不採算部門の経営資源を活用した事業転換や新分野(再生医療分野、環境エネルギー分野、農商工連携分野等)での創業、中小企業による連携(地域資源の有効活用等)を促すような環境整備が必要。
 また、日本の経営は行動力や戦略立案力等に課題があるが、新陳代謝の促進には企業経営における果断な決断・行動が求められる。
第2章 全員参加型社会に向けたものづくり人材の育成
■人口1,000万人減となる2030年でも、経済成長と労働参加が進めば就業者数の大幅な減少は抑えられる。「全員参加型社会」の構築と労働生産性を高める能力開発の効果的な実施が不可欠。
■雇用政策研究会報告書で製造業の就業者数は、経済成長と労働参加が適切に進めば、2030年でも987万人を維持できると推計。ものづくり人材の育成に取り組むことは重要な課題。
(1)女性技能者(製造業の女性比率は3割程度。全産業と比較して1割程度低い)
■女性技能者の活躍を妨げる要因は、大企業では「家事や育児の負担を考慮する必要がある」、「活躍を望む女性が少ない」が多く、中小企業では「女性技能者に向いている仕事が少ない」が多い。
■一方、女性技能者に対する訓練は、男性技能者と同じとする企業は9割以上。女性にとって技能者特有のネックがあるわけではなく、製造業は従事しやすい職場となる可能性がある。
■女性の就業比率が低いものづくり産業において、女性の就業を促進させるためには、女性が働きやすい職場環境を整備した上で、女性技能者への能力開発を進めていくことが重要。
(2)高年齢技能者(製造業の就業者数が10年で約200万人減少する中、60歳以上は20万人以上増加)

・・・>申し訳ありませんが、この続きは本誌でご覧ください。

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