政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


元エルピーダメモリ社長不本意な敗戦

坂本 幸雄 著

帯タイトルには「いっさいの取材を断り、沈黙を続けてきた著者が初めて語る」とある。
同社の主力、広島工場は「モバイルDRAM」のフル生産が続き、市場最高の利益をあげつつある。この4ギガビット(1ギガは10億)のDRAMを4層重ねて、1枚の薄さがわずか0.8ミリという超精密製品であり、これに賭けてきたのが坂本社長である。
この広島工場は台湾のレックスチップの工場より、人件費で3倍、電気代は2倍にもかかわらず、DRAM1個あたりの製造コストが安い、抜群の生産性と技術力を誇る。
2002年に経営危機に瀕した同社の社長に就くや矢継ぎ早の経営改革と世界中を飛び回り、巨額の投資に成功し、シェアを回復、04年に東証一部上場を果たす。その後のリーマンショック、円高、半導体不況が重なり、12年2月会社更生法適用を申請、エルピーダはマイクロン傘下の子会社となって存続することになった。
執筆の動機は、お詫びの気持ちも込め「世界で一番の技術力を持っているエルピーダの人材をちりぢりにさせたら2度と同じような技術開発ができなくなる。それを防ぐため、会社更生法適用の申請を決断したこと。かつて世界を制覇した日本の半導体産業の凋落に対する自らの答えを示すため」とある。
現在の日本の経営に足りない「製品への愛情」と「スピード経営」の2つは、現場からたたき上げてTIの副社長まで登りつめた坂本氏の指摘だけに鋭い。また、日本の電機メーカーの「事業分野の広がりすぎ」、「経営企画部門はいらない」など現代の日本企業の病巣をかいま見ることができる。(日本経済新聞出版社刊、定価本体1600円+税)

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