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「宛名」という行政のデータ

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

行政では重要な宛名管理

過日、情報系の団体の勉強会で興味深い話を聞く機会があった。それは行政、特に住民サービスを担う自治体の「宛名」という独特のデータのことである。一般に「宛名」と言えば、手紙などに書く相手の住所と名前のことだと理解されている。宅配便などで荷物を届けるとなると連絡電話番号の記載も求められる。これは郵便なり荷物なりを相手に届けるために必要な「個人情報」である。
自治体ではこの「宛名」という個人情報の考え方がかなり異なっているのだ。自治体が業務を進めるに際して、住民の情報が必要になるのは当然である。ベースとなるのは基本4情報と言われる住所、氏名、性別、生年月日である。しかしこれだけでは様々な業務に対応できない。行政は縦割りで業務が行われるために、転入転出の住民管理と高齢者サービスの住民管理では担当も管理するための住民情報も異なる。
それらの登録時に同一の住民に対して複数の宛名が出来る。1人の住民に対して複数出来てしまう宛名を名寄せによって同一人であることを確定していかなければならない。しかし名寄せ不足が重複支給や不正受給など様々な問題を惹き起こしていると言う。
これを民間企業に当てはめると顧客管理や取引先管理とよく似ている。発番管理が悪かったりデータクレンジングが不十分だったりすると名寄せも大変だし、正しい情報が抽出できない。
マイナンバー制度への期待と行政サービスの難しさ
自治体の宛名管理問題は宛名管理システムを使って名寄せをしようとしてはいるものの完璧な管理ができない。一方マイナンバー制度が実現に向けて動き出しており、2016年の4月から個人カードの交付が始まる予定になっている。
自治体の宛名管理問題はマイナンバー制度が展開されると解決されるのであろうか?統合宛名システムをベースに、追加属性情報としてマイナンバーを様々なサービス業務の共通のキーにすれば、名寄せは完璧に出来るだろうと期待される。しかし実態はそうではないようだ。
例えば、住登外者と呼ばれる住民登録が無くてもサービスを受けている人は存在するし、住民登録のある自宅と住民登録の無い別荘を使い分けている人もいるだろう。様々な状況や条件の住民にも配慮したサービスを提供しなければならないのが行政サービスの難しさだ。
マイナンバー制度が動き出せば新規の「宛名」の名寄せは出来るようになるだろうが、膨大な過去の「宛名」や住登外者に対して複数の宛名が発行されてしまうことはあり得る。改善提案のためにも自治体の苦労の実態を知っておくことは大切だ。      以上

 

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