政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


ユーザーが主体となり、会社の変化に合わせ、ITを変えていく事が重要

システムイニシアティブ協会(SIA)のシンポジウムにおけるパネルディスカッションが「攻めのIT投資」のテーマに合致していたので、その模様を要約して紹介する。

 

企業システムのユーザー自身がシステム開発の主体性を取り戻そうと活動してきた特定非営利活動法人システムイニシアティブ協会(代表・木内里美)は、8月に活動3年目を期して、「システムイニシアティブ2014」~ユーザー主体のパートナーシップがビジネスを成長させる~をテーマに東京・青山のダイヤモンドホールでシンポジウムを行った。
講演では、ユーザー、ユーザーを支援するITベンダーから様々な事例が紹介され、キーワードは「進化し続ける」であった。

(写真1)宮崎 富夫氏

(写真1)宮崎 富夫氏

●基調講演(宮崎 富夫氏 :鶴巻温泉元湯陣屋 代表取締役社長)(写真1)
「旅館にとって本当に必要なITとは何か」
ホンダの研究所を退職して、赤字続きだった家業の老舗旅館を継いだ宮崎社長は、
宿泊予約などのほとんどの業務が紙とペンで行われている上に、顧客情報は女将の頭の中、という旅館の業務をIT化した。
①情報の見える化(スタッフごとに持っていた情報を旅館全体で共有)
②PDCAサイクルの高速化(料理の原価や人件費を月次管理から日次管理に)
③お客様の情報を活用しておもてなしの向上
④仕事の効率化を行い、お客様との接点を増やす
これらの要件を満たすパッケージは存在しなかったため、「ないものは作る」というホン
ダの精神でシステムを内製し、『陣屋コネクト』と名付けた。「システムはできたところが終わりではない」。これまでITを全く使ってない現場の人たちに使ってもらうようにするため、さまざまな工夫をこらし、意見を取り入れながらシステム自体の改善も行った。情報共有の結果、社員のコスト意識や接客も変化。売上が6割増という結果をもたらした。
「新しいシステムもある程度改善を行うと進化が止まる」。そこで宮崎社長は『陣屋コネクト』をさらによくするために、他の旅館やホテルにシステムを販売し、販売先の声をシステムに反映することで進化させ続けている。
会場参加者のアンケートでは、「小さいシステムから初めて進化させ続ける」という考え方や「業務改革のツールとしてのITの活用」に共感のコメントがたくさん寄せられた。

 

(写真2)パネルディスカッション

(写真2)パネルディスカッション

●パネルディスカッション テーマ
「理想的なシステムとは」 (写真2)
・ファシリテータ:田口潤氏(IT Leaders編集主幹)
・パネリスト:宮崎 富夫 氏(元湯陣屋 代表取締役社長)
・パネリスト:河崎 幸徳 氏(株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 経営企画部部長)
・パネリスト:寺嶋 一郎 氏(積水化学工業株式会社 経営管理部 情報システムグループ 情報システムグループ長)

ファシリテータから、企業の情報システムへの投資内容や情報システム人材の雇用、経営者に対する新技術への関心度などの調査結果についてアメリカと日本を比較しながら、なぜ差があるのか、などについて意見が交換された。パネリストからは「ITは道具であって企業の目的を達成するための手段である。会社の変化にあわせて道具を変えていくためには、それを使うユーザーが主体的に変化させていくことが重要である」「『System of Records』と『System of Engagement』の視点でIT投資を整理する」「理想的なシステムとは『会社とともに進化し続けられるシステムである』」といった意見が出された。

 

(写真3)河崎 幸徳氏

(写真3)河崎 幸徳氏

●事例講演(写真3)
「最適なIT投資の実現に向けて」
河崎 幸徳 氏(株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 経営企画部部長)
業界内で自社の置かれた環境からみるIT投資の考え方、IT投資管理体制、投資に対する効果検証の方法などを、たくさんの具体的な例を挙げながら紹介。経営幹部が精力的に関与するような体制づくりを行い、効果測定では地道取り組みを妥協せずに行う姿に、多くの参加者が共感した。

 

(写真4)齋藤 正勝氏

(写真4)齋藤 正勝氏

●事例講演(写真4)
「IT戦略=経営戦略;近未来のIT社会」
齋藤 正勝 氏(カブドットコム証券株式会社 代表取締役社長)
IT戦略が企業未来を決めてしまうネット証券の経営者として、徹底したIT経営態勢、求めるIT人材像などについて述べた。ネット企業としてのカブドットコム証券の姿は、IT戦略が経営上の最重要課題となりつつある一般企業にとって別の世界の話ではなく、少し先に目指すべき姿として捉えた参加者が多かった。

 

(写真5)寺嶋一郎氏

(写真5)寺嶋一郎氏

●事例講演(写真5)
「なぜ積水化学では電子メールやグループウェアまでを自社開発したのか」
寺嶋 一郎 氏(積水化学工業株式会社 経営管理部 情報システムグループ 情報システムグループ長)
情報子会社にいたとき、外部仕様書が作成ができず外注できないような複雑な業務を、問題の本質をよく知る社内メンバーで開発した結果、業務改革に結びついた。自らの手でシステム開発やメンテナンスを行ってこそ、業務側のニーズの本質が理解できる。会社のビジネス・業務・環境とITの両方を知っている強い情報子会社を構築することが、親会社のIT活用に貢献することであるという考えのもと、システム内製を経験することによって
人材を育成している。

 

(写真6)長谷川秀樹氏

(写真6)長谷川秀樹氏

●事例講演(写真6)
「情報システム部を多機能型組織にせよ 東急ハンズのIT部門の遍歴」
長谷川 秀樹 氏(株式会社東急ハンズ 執行役員 オムニチャネル推進部長 兼 ハンズラボ株式会社代表取締役社長)
これまで、基幹システムは情シスが担当だが、Eコマースは営業部門、製品宣伝のWebサイトはマーケティング部門がやるものといった考え方をしていた。が、今はITが企業の価値向上にダイレクトに効く時代。IT部門は管理部門から営業部門に変身すべき。部下には、「ITが関係しそうなことは、現場からどんどん仕事をとってこい」と言っている。そしてとってきた仕事の中からすぐに効果の出そうなものを早くつくり上げ、ビジネス的な成果を出し経営に報告する。情報システム部門は、「機能別組織・コストセンター」から「経営方針を支える多機能組織」になっていこうという、情報システム部門への熱いエールが送られた。

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