政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


生きることとしての学び

生きることとしての学び

第8回
『生きることとしての学び』2010年代・自生する
地域コミュニティと共変化する人々

牧野 篤著/東京大学出版会/5800円(税別)
過疎・高齢化の問題解決に一石を投じる
「農的な生活」のススメ

少子高齢化と過疎化の同時進行により、「限界集落」となった農山村は少なくない。これらの過疎地に共通しているのは、「人が自らの存在を預け、生きている実感を得る帰属の場所でも、自分の存在を担保する記憶の場所でもなくなっている」ことであろう。言い換えれば、そこはもはや人々が生活する「社会」ではなくなっているということである。
こうした問題を解決すべく、各地方行政は、自立を基本にこれまでにも様々な施策を講じてきた。しかし、そのどれもが一時的な活気で終わり、本当の意味での地域の活性化へと結びついてはいない。著者はその理由を、それらの施策が、量的拡大をめざす従来の経済開発モデルの価値に基づいたものであり、当該地域の人々の日常生活に潜む文化的価値に目を向けていないところにあるとしている。
本書は、著者の理論をもとに、都市の若者10名が、典型的な過疎高齢化の進んだ農山村地区に住まい、高齢者との交流を通して、その地区を新たな生活の価値を生み出す場へと変容させるべく奮闘したプロジェクトの3年間の軌跡である。
彼らの生計の基本は農業だが、決して農家をめざすわけではない。彼らの目的は、失われつつある地元の生活文化を高齢者との交流を通して発掘しながら、都市的な文化と融合させて、新たな生活の価値を生み出すこと、そのことで地元の高齢者の生き方の変容を促して行くことである。著者はこうした生活のあり方を「農的な生活」の実現と呼ぶ。
このプロジェクトが成功に至るプロセスは迫真のドキュメントである。過疎・高齢化問題の解決に一石を投じることは間違いない。(情報工場・編集部)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">