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円安にメリットなし、リフレ策頓挫?

-日本を見る世界の眼 10月後半-

 

この時期の海外論調は、安倍改造内閣の目玉閣僚であった小渕優子氏(経済産業相)が政治資金スキャンダルによって辞任に追い込まれたことについて、中国及び欧州のメディアによって大々的に取り上げられる影で、直近拍車がかかった円安局面が安倍政権の経済政策であるアベノミクスに与える影響及びアベノミクスの行方を不安視する論調が目立つ結果となった。

10月15日付けのウォールストリートジャーナルは、最近の円安の進展によって明らかになったことは、「アベノミクスによって企業利益、株式市場、失業率では改善が見られたものの、非常に多くの日本人が景気回復の恩恵を受けていないという事実」であり、「実質賃金は低下し、東京など大都市圏と地方の所得格差は悪化の度合いを強めている」との見解を披瀝している。円安はアベノミクス第一の矢に付随する「必然的代償」としながら、問題は円相場ではなく、安倍首相が実質賃金を引き上げる手段を有しているか否かにかかっており、唯一の方策は、日本企業の313兆円に達する内部留保を吐き出させることであると主張している。しかしながら、安倍氏は大企業に対してはほとんど影響力を持っていないという現実は厳然と残っており、賃上げを求める前例のない政府の介入にも関わらず、賃金上昇率はインフレに追いついていないのはその証左であり、すでに輸出・大企業は海外に生産をシフトしているため、法人税を引き下げたとしても状況は変わらないとの見方を示した。結局は安倍氏と自民党はもっと大胆な改革をするほかはなく、現在の円安は全ての国民がアベノミクスの恩恵を実感できるようにするための警笛であると論じている。

一方、10月16日付けのフィナンシャルタイムズは、円安は万能薬ではないが安倍氏にとっては必要なものであり、インフレにはいくらかのメリットがあると一定の評価をしながらも、円安はデメリットの方が大きいとの見方を示している。特に、原発の稼働停止でエネルギー費用が急増し日本の貿易収支が悪化したことや、すでに日本の大手メーカーは生産を海外にシフトさせ輸出が国内総生産に占める比率は約15%になるなど日本はもはや輸出立国とは言えなくなっている中での円安にはメリットを見出せないとした。今や日本にとって重要なことは、日本が他の先進国と同様にサービス産業が支配的な経済になっており、日本人の多数が、実は円安よりも円高の恩恵を享受する企業に雇用されていることを知るべきであるとした。安倍氏による円安のメリットとデメリットの両面があるとの認識は正しいが、日銀との間で亀裂が生じ、日銀が追加の金融緩和に躊躇するようになれば、これまでのリフレ政策が頓挫する可能性があり、安倍氏の対応次第では破滅的な結果になるだろう、と今後の展開に注意を要するとの見方を示している。

 

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