政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


一般社団法人日本ロボット工業会会長
津田純嗣氏に聞く
安川電機社長

一般社団法人 日本ロボット工業会会長  津田純嗣氏

一般社団法人 日本ロボット工業会会長  津田純嗣氏

 ロボット革命実現会議の主要メンバーである、日本ロボット工業会の津田会長に、今後のロボットの見通しを聞いた。

–今年の産業用ロボットは好調だ。中国、米国、欧州それぞれの要因は何か。
津田 過去2年の市場成長の内、7割が中国によるものだ。自動車への投資など自動化の範囲が拡大した事が背景にある。自動化率の違いを例えて言うと、日本では自動車の生産規模が1000万台で産業用ロボットを30万台使っているのに対し、中国は3000万台で10万台しかない。もし日本と同じ基準でやるなら単純に9倍以上の需要があることになる。中国市場は可能性が大きいだけに、ローカルのロボットメーカーも新規に参入してきている。今のところは、品質・性能の面から重要な設備には採用されていないが、将来はライバルとなり得ると考えている。
欧米では自動車はもちろん好調だが、搬送用ロボット等ハンドリングの比率が日本よりも高い。日本と違ってエンジニアリングのコストも評価されるので、システムインテグレーター(以下、SI)が非常に多く、ロボットシステムの導入が進んでいる。その反面日本では、生産技術がしっかりした大企業での導入に偏っている。
なお、欧州は台数では伸びているが、ドイツ向けでも実はさらに海外に輸出されるなど分散している。

–今年のロボット生産及び来年の見通しは?
津田 今年は16万台ぐらいだ。5年前はほとんど国内生産だったが、今年はすでに1万台を超える海外生産がある。2006年の7300億円をピークに不景気で停滞していたが、最近は全体的に回復基調だ。台数ベースでは回復したが費用削減や小型化志向が強く、金額ベースでは6200億円程度との予想だ。
来年は量的には今年ほどには伸びないと思う。自動車工場ができる分がプラスだが、ロボットの製造能力よりもエンジニアリングと共に成長する市場だから、台数ベースで0~5%アップすれば良いと考える。為替については、海外ではその国の市場価格で販売されており、円安は利益増に貢献する。

–政府がロボットを戦略産業としてロボット革命実現会議を発足した。産業用ロボットの立場から委員としてどんな意見を述べるか。
津田 遅れている産業アプリケーションを一歩前進させたい。技術的なブレイクスルーで適用を広げたいし、設備投資を躊躇しがちな中小企業のためにも何らかの手も打って行きたい。ただし、研究機関とメーカーは競争関係の点で事情が異なるので、オープンイノベーション的な発想と、誰が勝つのかというところをうまく分けたい。

先が見えない中小企業には補助金があってもロボットの導入は進まないが、北九州や広島では、官と中小企業同士が協業を深める動きが始まっているが、これを全国に広げたい。ロボット産業の発展にはユーザーとメーカーの協力関係が重要であり、両者を結びつける役割を担うSIが非常に重要である。欧米のようにSIが活躍する場をもっと増やすべきだ。一方で経営コンサルタントには金をかける企業が多いので、経営コンサルもできるSIを育成することも一案だと思う。

–海外では、ロボット・AI・クラウド技術を使った、機能の達成に目的を絞ったスマートロボットへの投資が活発だが、この動きをどう見るか。
津田 私はロボットの定義として「動作することで仕事ができる」ものがロボットと考えている。スマートロボットの要素技術としてはロボットに使えるものは多いと考える。技術の精緻さが大幅に向上すれば、工場のロボットにも応用できるし、リアルとバーチャルが融合する新たな世界が次々に出てくると思う。

欧州では産業用ロボットの適用研究に力点が置かれているが、一方米国では、要素技術の研究成果を素早く事業化する動きの中でベンチャー企業が生まれ、それに追従する人々も多く出てくることで好循環となっている。

–日本のロボットはマシン単体志向が強い。ロボット技術を色々なニーズにシステム化できるSIが必要だと思うが、そういう人材育成の方向をどう思うか?
津田 ロボットの活用を広げるためにはSIの活躍が重要と思う。そのための人材育成では、米国のコミュニティカレッジに倣い、ロボットを使いこなせるようになるためのプログラムを高専等に導入して貰いたい。

ロボット革命を起こすには、多くの人がかかわっていただく必要がある。政策的には総花的ではなく、集中した施策で民間の活動の動機付けとなるような成果の見え方を描いて強力に実行していただきたい。

安倍総理のイニシアチブによるロボット革命実現会議の設置

安倍総理のイニシアチブによるロボット革命実現会議の設置

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