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粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う

粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う

第12回『粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う』

中垣俊之 著/文藝春秋 刊/730円(税別)

謎多き生命体がもつ驚くべき「知性」
人間が見習うべき“大雑把”な単純化

私たちは複雑なものほど高度だと考えがちだ。だが、本書はそんな、ダーウィンの進化論的な常識を揺さぶってくれる。脳も神経もない、最下等の生物と思われている粘菌が、私たち人間が見習うべき、優れた「知性」を持っているというのだ。
粘菌は、都会の植え込みなどにも潜んでいる身近な生物。アメーバ状の不定形でうごめき、微生物などを補食するかと思えば、キノコのように胞子によって子孫を残す。動物なんだか植物なんだかよくわからない、謎深い単細胞生物だ。
その粘菌が「迷路を解く」という面白い研究によりイグ・ノーベル賞を受賞したのが、本書の著者だ。イグ・ノーベル賞とは世界中の「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られる賞で、現在北大電子科学研究所教授である著者は粘菌にまつわる研究で2008年と2010年の二度にわたり受賞している。
二度目の受賞理由は粘菌がJRの鉄道網と似たネットワークを形成するという研究。エサを地図上の主要都市の場所に配置すると、粘菌は体を伸ばして、各地点を可能なかぎり効率的に結ぶ管をつくる。著者はこの“知性”のカーナビへの応用も研究している。
粘菌は、複雑なものを単純化する。全体を「だいたいこんなものだろう」と把握し、大雑把な答えをまず出す。それから一つひとつ検討するのだ。
物事を考えるときに事情やしがらみが混じり、複雑な問題がさらに込み入ってしまうことはよくある。そこで、原点に帰ってみる。また直感に頼ってみる。粘菌を未進化なものとして下に見るのではなく、「余計なものをもたない単純さ」に敬意を払ってみてもいいのではないか。

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