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「ソフトウェア化する自動車」

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

2004年にIPA/SEC(ソフトウェアエンジニアリングセンター)が設立された理由のひとつは、大規模化する組込みソフトウェアへの対応であった。なかでも、自動車はその最右翼で、「車はガソリンではなく、ソフトウェアで動いている」をキャッチフレーズにしていた。この傾向は今も続いており、最近の高級車のソフトウェアは1億行を優に越えているようだ。
一方、米アップル社のスティーブ・ジョブズ氏は、iPhone発売時に、「日本の巨大な家電メーカーは、かつて携帯型音楽プレーヤー市場を牛耳っていたが、きちんとしたソフトをつくることができなかった。優れたソフトを考えることも実装することもできなかった。iPodはソフトだ。あの本体に収まったソフトと、パソコン用のソフトと、音楽購入用のソフトの組み合わせだ。確かに美しい箱に収まっているが実体はソフトだ」と述べた。
いち早くソフトウェアの重要性に気付いたアップルが、携帯アプライアンスの分野を席巻したことは言うまでもない。
携帯以外でもほぼすべての家電製品においてコンピューター化が進み、新機能の搭載はハードウェアよりもソフトウェアで実現するのが主流となった。ところが、多くの家電メーカーの経営層はハードウェア畑出身で、ソフトウェアの重要性を肌で感じ取れず、現在の苦境を招いた。
上述のように、自動車の分野は比較的迅速にソフトウェア化の流れに乗ってきたように思うが、ここにきて異変が起こりつつある。それはテスラ社の動向だ。
一例をあげる。高速道路の運転中や渋滞時などに前の車の後を自動でついていく自動追尾機能や、狭い駐車スペースにもピタっときれいに駐車をしてくれる自動駐車機能など、日本車にも搭載され始めている先進機能がテスラのモデルSには、当初なかったそうだ。
しかし、ある日、車内中央の巨大なパネルに「ソフトウェアアップデートがあります」と表示されたので、ボタンを押してみると、すぐさまその場で通信が始まり、先ほどまでなかった上記機能が搭載されてしまった、という。
一つ一つの機能は日本メーカーも追随していくと思うが、テスラ社がシリコンバレーの真ん中で創業したことは大きな利点だ。最大の利点は、周りに業界で最高に優秀なソフトウェアエンジニアがいることだ。事実、フォードなどを経て2008年にアップルに移籍、MacBook Air、MacBook Pro、iMacなどのハードウェアデザインを手がけたダグ・フィールド商品開発担当副社長がテスラにヘッドハントされた。
今後もテスラ社の動きに注目する必要がある。

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