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特許庁情報技術統括室長 安久司郎氏に聞く

安久司郎氏

安久司郎氏

特許庁が特許・実用新案の電子出願受付をスタートさせたのは1990年12月。
84年7月にペーパーレス計画を策定し、世界に先駆けて始めた『電子出願』が今年で25周年を迎えた。

そこで入庁当時から、このペーパーレス計画に携わり、
現在は、特許庁業務・システム最適化計画を担当している安久司郎情報技術統括室長に話を聞いた。

ペーパーレス化以前は、特許の申請人は書類の持参か郵送で出願していた。しかし、出願件数や特許情報の増大により、出願管理の困難さと審査期間の長期化が重なり、特許公報から情報を検索するのも利用者にとって大変な作業となっていた。
「発想は書類の山を電子化しようという単純なものでした。どうせやるなら出願・発送・閲覧まで一気通貫でやろうとペーパーレス計画が動き出しました」。
25年前はインターネットもない時代に専用の通信システムを使い、電子出願が行われた。「特許・実用新案には図面もあるため、表示用の専用端末を作りました。当時、図面も送信できる画期的な端末でしたが、1台600万円もしました」。
その後、98年にパソコンでの電子出願受付、2000年には意匠・商標・国際特許出願・審判の受付、05年にはインターネット出願・電子納付まで行えるようになった。
「おかげさまでスタート当時、43%だったオンライン出願率(特許・実用新案)はいまや98%に達しています。意匠も93%、商標85%、審判99%となっており、世界でもこれほど電子出願率の高い国は他にはありません」。
特許庁は2013年3月より、特許庁システムの刷新プロジェクトである「特許庁業務・システム最適化計画」(10年計画)をスタートさせている。以前手掛けたプロジェクトが開発中止を余儀なくされ、今度は失敗が許されない。世界最高レベルの迅速かつ的確な権利の設定に不可欠なシステム基盤の整備、安全性・信頼性の高いシステム及び運用体制の構築など4つの目標を掲げている。
「この最適化計画は、民間の有識者で組織された『特許庁情報システムに関する技術検証委員会』(委員長・大山永昭=東工大教授)から専門的な意見を頂いています。また内部には3人のCIO補佐官を置き、徹底した改善・改革により進めています」。
実施における重点事項は5つ。①システム開発方式の見直しによる難易度の大幅な低減とリスクの最小化、②プロジェクト推進・監理体制の強化、③業務等についての徹底的な分析、④調達手続の改善、⑤外部監査体制の確立による客観性の確保。
「以前の計画は住宅で言えば『全面改装』でしたが、今回の計画では、必要なところからリフォームして行き、最終的に『全面改装』が出来上がるイメージです。要求定義をこちらでしっかり作り、システム屋さんに作りこんでもらう方式にしています」。
そのやり方でまず、最初に取り組んだのが、中国語、韓国語の特許文献を機械翻訳して日本語で検索できる情報システムだ。今年1月に完成し、約1200万件(3月末時点)の文献検索が可能になった。「中国はいまや特許出願大国であり、2015年には特許・実用新案・意匠の出願件数が250万件と予測されています。中国語の特許文献の翻訳ニーズへの対応は喫緊の課題でした」。いち早くニーズの高いところからシステム化していくのが今回の計画のやり方のようだ。
そして、現在、意見募集中で8月に公開が予定されているのが、アーキテクチャ標準仕様である。今後10年、システム構造の見直しを行うための根幹となる部分で、段階的に行っていくシステム刷新がバラバラにならないための重要な策定となる。
「特許庁には膨大なデータがあり、システムごとの刷新・改修に合わせ、データベースをどうきれいにまとめていくかが重要です。今、複雑な業務の分析を1つ1つ書き出し、分析し、データの現状と将来のあり方を把握しながらシステム化を行う準備をしていました。それらがほぼ終わったので、次の開発フェースに移る段階です」。
今回の計画は前期2017年度までは、多言語の機械翻訳・検索システム、新商標・意匠など制度改正の対応、特許・実用新案の経過情報のリアルタイム提供などを集中開発する。残りの5年でデータベースの統一を含めた全システムの刷新を行う予定だ。
特許庁は世界で初めて何もないところから電子出願をスタートさせてきていたため、25年経過すると、システム構造が不統一のため、システム間連携に課題があり、データの受け渡しに時間がかかるなど、課題が多く存在していた。その間、後発の他国の電子出願システムが最新の技術を採り入れて進んでしまった点は否めない。
「とにかく、レガシーシステムだったものを今年1月からオープン系に全て移行しました。将来は四法の共有データベースでリアルタイム処理ができるようになります。そして、世界でも最高のレベルの迅速で的確なシステムに出来るよう仕上げて行きたいと考えています」。
いまや世界の特許庁をリードするわが国の特許庁の情報システムが各国から再び、注目される日がやってくることを期待したい。

最適化計画は10年を前期・後期に分け、進めていく予定だ

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1200万件が可能な中韓文献翻訳・検索システムが動

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