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アイヌ学入門

アイヌ学入門

第20回
『アイヌ学入門』
瀬川拓郎 著/講談社 刊/840円(税別)

交易による文化融合で変容してきた
知られざるアイヌの姿を描きつくす

昨年夏、札幌市議が「アイヌはもういない」とツイッターで発言し物議を醸した。発言の是非は置いておくとして、この騒動で、主に北海道に住む日本の先住民族であるアイヌの存在が多少なりともクローズアップされたのは確かだろう。
本書では、アイヌ研究に実績があり、旭川市博物館長を務める考古学者が、「交易」というキーワードを中心に、知られざるアイヌの姿を探っている。
縄文人の末裔として、その特徴を今も色濃く残すアイヌは、10世紀以降、本州の和人(現代日本人の大多数を占める民族)や、サハリンから南下してきたオホーツク人と積極的に交易・交流を行ってきたという。それによって伝統行事や生活習慣、部族のあり方などをダイナミックに変化させてきた。
その姿は、私たちが抱いてきたアイヌのイメージとは異なるのではないだろうか。独特の色あいの衣装に身を包んだアイヌは閉じた世界にいる狩猟民族であり、「変わらない」存在と思われがちだからだ。
民族の歴史を人間の一生に置き換えてみる。人は誰しも、成長の過程の中でさまざまな人や物事に出会うことで人格を形成していく。そのプロセスを見ずに、生まれながらの顔かたちや出自だけで人を判断することは、差別や偏見につながる。民族も同じだ。アイヌを現代の日本に生きる民族の一つとして公正にとらえるためには、交易による文化融合のプロセスを知ることが欠かせない。
さらに、その文化融合の様子は、グローバリズムの渦中にある日本全体の行方を占う意味でも大いに参考になるものといえる。
(情報工場編集部)

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