政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


「Only The Paranoid Survive@SV」

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

「シリコンバレーではパラノイアのみが生き残る」とは、インテルの創業者アンディ・グローブの名言として有名だ。パラノイア(偏執症)という単語を辞書で引くと、神経症の一種で、妄想にとりつかれた精神状態だとか、あまりいいことは書かれていないが、グローブは、「一つのことをとことん追求する点において、常人をはるかに凌ぎ、常にその事を考え徹底的に思考を巡らす」という意味でパラノイアという単語を使っている。
アップルのスティーブ・ジョブスも、「成功する起業家とそうでない起業家の違いのおよそ半分は、純粋に忍耐力の有無にある」と言っている。このことは、指導者に求められる資質として「類まれな持続する意志」が重要であることを示している。特にiPod/iPhone/iPadの成功は、成功することを信じて行い続けた執念以外のなにものでもない。
日本でも、ソニーの井深大やホンダの本田宗一郎はまさにパラノイアだった。今も事業を「切る・削る・磨く」に特化し、半導体ウエハの切断・研削・研磨装置で世界ナンバーワンを走り続けているディスコもパラノイアの血を引き継いでいる。
パラノイアは技術の分野の専売特許ではない。幻冬舎の見城徹氏の著書「たった一人の熱狂」を読むと、見城氏のパラノイアぶりがよくわかる。石原慎太郎の原稿をもらう時は、「太陽の季節」と「処刑の部屋」の全文を諳んじた。慎太郎の前で暗誦し始めると、「わかった。もういい。お前と仕事するよ」と言ってくれたらしい。モノが売れない時代ではあるが、ここまでの努力をしている営業マンがどれぐらいいるのだろうか。
かつて幻冬舎で仕事をした人の話では、夜でもオフィスに絶え間なく連絡があるらしい。「手掛けているプロジェクトが心配で心配で仕方がないのだ」という。ビジネスの世界では、今も昔も、こういう圧倒的な努力をする人が成功するのだが、問題は引き際だと思う。
パラノイアも歳をとるとコンサバティブになる。「難しい時代になったな。これまでのような成長ができるのだろうか」と性格上、人一倍心配になる。これでは会社の成長に自ら制約を課しているようなものだ。
「俺はこの会社を〇○年で00倍にした。君たちにできるか、できるのならやってみろ」と言って、後進にバトンタッチするのが、次なる発展を促す格好いいリタイアメントだと思う。
(IPA・SEC前所長、元情報処理学会会長)

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