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日本人が知らない漁業の大問題第22回
『日本人が知らない漁業の大問題』
佐野雅昭 著/新潮社 刊/700円(税別)

日本の豊かな魚食文化を守るのに
必要な「非効率」を考える

現代の日本において「文化」を守るのは容易ではない。それはそもそも文化というものが、資本主義社会の原則の一つである「効率」とは別のベクトルをもつものだからだ。
本書では、漁業の担い手・後継者不足、若者の魚離れ、輸出拡大政策による自給率低下などの「漁業の大問題」が指摘される。それらはいずれも、日本人が古来より受け継いできた「魚食文化」の崩壊につながるものだ。それは「マグロやウナギが食べられなくなる」といった次元の問題ではない。
文化は多様性によって担保される。日本が誇る魚食文化も、スーパーや食卓に並ぶ魚種の豊富さによって支えられている。さらにその豊かさをもたらしているのが、日本独特の漁業協同組合(漁協)や卸売市場流通による資源管理だ。これらはまさに「効率」とは相反するものだ。そして漁協や卸売市場のシステムは、世界から注目を集めているという。
私たちのバラエティ豊かな食生活と食の安全性を支えるのは、卸売市場流通で活躍する「魚の専門家」たち。市場で魚の目利きをする専門流通業者のことだ。彼らの専門性や高いモラル、そしてプライドは、非効率で複雑な卸売市場で磨き上げられたものだ。米国では、このような「プロ」は存在しない。そして水産物売り場にはバリエーションの少ない缶詰めや冷凍食品ばかりが並ぶ。
資本主義の求める効率と、守らなければならない文化の折り合いをどうつけていくべきか。私たちはこのバランスを常に考えなければならないのだろう。これは漁業だけの問題ではない。(情報工場編集部)

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