政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


 

西村英俊氏

西村英俊氏

統合急ぐAECと日本の役割

 2015年ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国が1つの経済圏、AEC(ASEAN経済共同体)に向けてスタートする。OECD(経済協力開発機構)とMOU締結1周年を迎えたアジア版OECDを自認するERIA(エリア=東アジア・ASEAN経済研究センター)の西村英俊事務総長にその現況と日本の役割を聞いた
(聞き手・本紙編集主幹・高橋 成知)。

–もともと2020年を目標にしていたAECを2015年にはやめたのは中国の影響があるのか
「2001年当時、中国はWTO(世界貿易機構)に加盟し、江沢民主席は『2020年に全面的小康社会を実現する』と宣言。2004 年6 月に施行された「外商投資商業分野管理規則」(商務部令2004 年8 号)の歴史的大改革を行った。それまで中国国内のルールがばらばらで、世界の工場といわれても国内で商品が販売できず、起業も出来なかったものをWTOルールに則って改善、この間GDPが5年間で2倍に成長した
ASEAN首脳は、2007年に、当初AEC2020年の目標を5年早め、2015年に前倒しした。ERIAはASEAN経済統合加速化の知恵袋として2007年の第3回東アジアサミット(ASEAN10カ国と日本、中国,韓国、ニュージーランド、オーストラリアの16カ国)で設立が合意された。国際機関となったERIAに最初に具体的要請が為されたのは、2008年のリーマンショックの時であり、世界の危機に対してASEANを中心とする東アジアが世界経済の牽引役となるために作成したのがアジア総合開発計画である」

ASEANコネクティビリティ強化のためのマスタープラン

ASEANコネクティビリティ強化のためのマスタープラン

–アジア総合開発計画の狙いは何か
「狙いは、プロダクション・ネットワークの拡大、深化、発展にある。セカンド・アンバンドリング(高度な工程間分業を実現する生産ネットワーク)をASEAN内に構築していく。つまり、日本からの製造業の移転を含め、それぞれの地域がつながりながら、発展していくモデル。フィリピンで車の部品を作ったら、タイでモジュール化し、中国で組み立てて世界に輸出する。このようなことが出来る地域はASEAN以外にない。経済統合を進めるための港湾、道路、水源、発電所などこの地域に必要なプロジェクトの695を選定し進めてきた。その規模40兆円。現在、その90%以上がすでにFS以降の段階にあり、半分が建設中もしくは実行段階にあり、レベルは確実に上がっている」

–ECという構想はなにが特徴か。世界の投資家のこころを捉えたといえるであろうか
「NAFTAやTPPは自由な競争を可能とする単一事情を目的とするが、ASEAN経済共同体は単一市場だけではなく単一生産基地をも同時に達成しようとしている。08年から13年までの間にASEANへの直接投資はは2・5倍の120億ドルを超えた。日本の製造業のASEANに対する貢献を彼らはよく理解しており、2015年以降さらなる高度な経済統合を推進していくうえで、日本の力は不可欠のものと考えている。セカンアンドバンドリングを可能にしたのは情報革命の力によってである。ASEANは現在世界で最も進んだ生産ネットワークを実現しており、AEC2015を完成させ、RCEP(包括的経済連携)を推進していくことができれば、世界でもっとも成長する地域のひとつである」

–そのインフラ投資に中国がAIIB(アジアインフラ開発銀行)を設立、世界の57カ国が参加を表明したが日本は参加を躊躇している。大丈夫なのか?
「巨大なインフラ需要に対して新しいソースができることは歓迎すべきことである。世界は日本の貢献を期待している。OECDとERIAは緊密な協力をしている。ERIAは東アジアの実態を踏まえて独自のPPPガイドラインや、SME政策インデックス、その他多くの研究を行っている。エネルギー分野をはじめ多くの産業回廊プロジェクトなど多くの有望プロジェクトを見出してきた。現在ADB(アジア開発銀行)の協力も得て、アジア開発計画の全面改定を行っているが、世界スタンダードに則ったERIAの成果はAIIBの参考になると思う。日本と力を合わせて東アジアのインフラの充実に貢献してもらいたい。」

–AECは人口34億人、GDP20兆ドル(世界の30%)となるRCEPの中心になるべきではないか。日本企業はRCEPとASEANの関係をどう理解すべきか
「AECはEUとは異なる共同体形成のチャレンジである。AECは極めて優れた成果をすでに成し遂げている。ASEANが中心となって、その精神をRCEPに展開してもらいたい。AECとRCEPの両輪がASEANをより高次の共同体形成へと向かわせる。その果実を先行的に得るためにも日本の製造業は、自らのコアの力を強化する企業戦略に基づき、さらに積極的にASEANに進出していくべきです。
ASEANの中で次の注目地域はベトナムだ。経済発展の条件である巨大市場、AEC2015において、5000の行政手続きの電子化と簡素化をなし遂げた。経済成長を遂げながらGINI係数を改善させた。成長と格差是正をやり遂げたAECの優等生である」

ERIAが担ったアジア総合開発計画(CDAP)はプロジェクトの90%が実行段階にある

ERIAが担ったアジア総合開発計画(CDAP)はプロジェクトの90%が実行段階にある

<にしむら ひでとし> 
1952年大阪生まれ、76年通産省(現経産省)入省。日中経済協会専務理事を経て2008年より現職。早大客員教授、インドネシア・ダルマプルサダ客員教授。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">