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寺院消滅

寺院消滅

第26回
『寺院消滅』
~失われる「地方」と「宗教」
鵜飼 秀徳 著/日経BP社 刊/1,600円(税別)

地方衰退のあおりで寺院も“消滅”へ
求められる僧侶の意識改革

国内にある寺院は25年後には現在の3分の2ほどになるという。そう言われても都市部や郊外に住む人にはピンと来ないかもしれない。それほど寺院は私たちの生活に身近ではなくなっている。寺や僧侶は葬式の時に呼ぶものという認識しかない人がほとんどだろう。その葬式も無宗教で行い、墓もいらないと考える人が増えてきているのだ。
一方で地方の「寺院消滅」は深刻だ。人口減少による地方衰退の象徴が、檀家制度でコミュニティの中心的役割を担う寺院の窮状なのだ。「空き家問題」ならぬ「空き寺問題」も起こっている。檀家の減少による経営難や後継者不足から住職のいない「無住寺院」が増え、中には荒れ果てて倒壊するケースも。
本書ではさまざまな事例がレポートされており、歴史的経緯からも消滅の原因を探っている。その中から読みとれるのは、寺院をめぐる問題の多くは僧侶の問題だということだ。無住寺院になっても地域住民が掃除や草取りを続け、寺を維持している例も珍しくない。
東京都国立市、一妙寺の赤澤貞槙住職は、世襲ではなくサラリーマン家庭から若き僧侶となった。彼は請け負った葬式を「感動的なもの」にすることで住民の信頼を得て、自前の寺を開くことに成功する。「葬式仏教」と揶揄されることを逆手にとり、葬式を重要な布教の手段として前向きなアイデアを込めたのだ。
寺院には、日本人の精神文化の伝統と、地域コミュニティを守る務めが課せられている。そのことをしっかりと認識した上で、目の前にある物事に工夫を加える真摯な姿勢が僧侶には求められるのだろう。

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