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大企業病と坂の上の坂

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

日本有数の大企業に永年勤めていたから、大企業病については熟知しているつもりだ。大企業病とは、保守的で新しいことになかなか着手できない状態や、顧客のことを考える前に組織の縄張り争いや社内抗争に明け暮れている状態、意思決定に非常に時間がかかる状態などを総称したものだ。
最近の東芝の不適正経理の例でも、社会的使命を忘れた社内抗争が原因だと言われている。
大企業病は大企業だけの現象かと言えばそうではなく、中小企業やベンチャー企業でも見られるため、会社規模に関係なく企業体質を表す言葉とも言える。
もう少しくわしく大企業病をみていくと、
① 視野が狭く、目先の業務にしか興味がない
② 新しいことにトライしない
③ 飛躍した発想ができず、現状維持に汲々としている
のような症状が見られる。
たとえば、使い勝手が悪く、機能も不足している一世代前のシステムに苦労している企業に、新しい世代のシステムを奨めても、結局は現状維持に落ち着く会社が多い。要は、「社内の調整や説得を考えると面倒なので導入しない」ということだ。
長い期間、大企業病に罹っていると、「自分の頭で考えない」という症状が顕著になる。このような企業では、担当者だけでなく課長や部長も上を見て仕事をすることになりがちだ。自分で情報収集をし、考えて発言するというよりは、上から指示された仕事を鵜呑みにしてひたすらその範囲に集中するという仕事のスタイルになる。
この結果、計画作成は熱心にやるが、それをどういうビジョン、戦略で実行するのか、どうやって具体的に現場のアクションに落としていくのかについては弱い、という現象にも通じる。変化の激しい時代には、計画は作成してもすぐに修正が必要になるので、この弱点が致命的になる可能性が強い。
高度成長期は、自分の頭で考えなくても年功序列の流れに乗っていれば、終身雇用の特典で定年まで勤められた。しかし、今は違う。
評論家であり、教育者でもある藤原和博氏は、かつては「坂の上の雲」、一生懸命に坂を登ればそこには雲があったが、いまは「坂の上の坂」、坂を上ってもそこには次の坂がある、と言っておられる。
たとえ大企業に勤めていても、これからの時代は、自分の頭で考え、自分の才覚で、3つや4つの山を登らなければならないだろう。

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