政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


近視眼の経営が会社を劣化させる

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

日本版SOX法と呼ばれる内部統制制度が施行されてから7年が経過するが、企業の不祥事は相変らず後を絶たない。会社法が整備されて監査の仕組みも強化されたが、経営者の直接関与や監査役も加担しているとか簿外処理とかの不正行為は容易には見抜けない。
多くは内部告発から露呈するが、それは浄化作用の最後の砦のようなものだ。企業の不正行為の根源は概ね企業文化に根ざしている。しかし最近は優れた企業文化をもつと思われていた会社が不祥事を惹き起こす。そこには近視眼的な経営が感じられてならない。
グローバリゼーションの流れの中で、上場企業には2008年4月1日以降の事業年度から四半期決算の報告制度が適用された。その後一部簡素化されたものの四半期ごとの連結での財務諸表の開示は必須である。自社の業績管理のために月次決算を実施している会社も増えているが、株主向けの決算開示とは意味合いが異なる。
株主や株価を意識する余り売上至上になったり、IR活動で過剰なオーバーヘッドを掛けたりするのは本末転倒である。ところが実態は短期の業績目標を追いかけ、経営者はロジカルな経営プランのないままに精神論で事業責任者の尻を叩く。そういった近視眼の経営風潮が経営の品質を落とし、企業を劣化させ、不祥事につながっているとは言えまいか?
筆者の知り合いの上場企業の社長は、MBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による買収)によって自社の上場廃止を決意した。その思いは長期展望に立った経営改革をするためだと言う。短期目標で利益を確保していても企業体質が強化されなければ、企業のサスティナビリティは担保されない。
目先の利益を追うことよりも、財務体質が健全なうちに経営改革を断行し、顧客サービス強化による高収益体質を作りたいという思いだ。改革過程では業績が下振れすることもあるだろう。株主に気兼ねなく断行できることは改革を早める効果もある。
10年先を考えて、今やらねばならないことに取り組んでいる経営者はどの位いるのだろうか?オーナー企業ならいざ知らず、サラリーマン経営者は己の任期中の業績が第一の近視眼になってはいないだろうか?
バブル崩壊後、人件費削減を目論んで「成果主義」がもてはやされた。経営者ばかりでなく社員までもが近視眼的な振る舞いになり、モチベーションは上がらずモラルバザードも起こして失敗した事例が続出した。人事評価制度も長期をみて人材を育成するものでなければならない。長期展望に立てば、結果は後からついてくるものだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">