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驚きの皮膚

驚きの皮膚

第33回
『驚きの皮膚』

傳田光洋 著/講談社 刊/1,500円(税別)

「見る」ことも「聴く」こともできる
人間の「皮膚」の可能性を論じる

何かを評価したり、判断するときに「皮膚感覚」という言葉がよく使われる。非論理的だが、「当てずっぽう」というより、「鋭く本質を見抜く」といったポジティブな意味で用いられることが多い。これは、皮膚が、目、耳、鼻、舌など他の感覚器よりも、はるかに大量の情報を受け取り、処理できるという事実を示すものではないだろうか。多くの情報を受け取り、それを適切に処理できるがゆえに、本質に近づくことができるということだ。
本書では、資生堂リサーチセンターの主幹研究員として皮膚の研究を進める著者が、そんな感覚器としての皮膚の驚くべき能力を、さまざまな研究成果を引きながら紹介している。
本書によれば皮膚は「見る」ことも「聴く」こともできる。聴覚については、バリ島の民族音楽・ガムランの奏者がトランス状態になることに着目した研究結果を例に挙げる。トランス状態は、皮膚が耳には聞こえない周波数の音を「聴いている」ことによって発生するというのだ。
ところで、論理やシステム、法則・公式などは「共通」「普遍」をめざすものであり、「個」とは対立する。人類の科学文明は、「個」よりも「共通」を追求することによって発展してきたと言ってもいいだろう。だが、共通化、普遍化が進み「個」が消えていくことで、私たちは幸せになれるのだろうか。
「個」を取り戻すには、皮膚に活躍してもらうしかない。皮膚は「個」から離れることはないからだ。皮膚の「本質を見抜く」力を信じることで「個」と「システム」の健全なバランスが保てるのかもしれない。
(情報工場編集部)

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