政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


経済産業新報創刊70周年に思いを馳せる

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

出版業界苦悶の時代に
本紙が創刊されたのは1946年(昭和21年)の1月だそうだ。前年の8月に終戦を迎えた日本は、まだ混乱と混沌の中で1月1日には昭和天皇の詔書が発布され、国民の心を束ね戦後復興に向けての士気高揚と統治の方向がようやく示された頃のことである。
そんな時代背景のなかで専門メディアとして商工、経済産業の情報を伝えようとした創業者の思い、そして70年間に亘って意思を貫き発行し続けてきた重みは半端なものではない。
翻って今の出版業界を概観すれば、その状況は極めて厳しい。ここ7、8年販売数が一貫して減少している新聞は若年層の新聞離れが原因と言われることが多いが、年代を通じて新聞を読む時間の減少や高齢者のテレビ依存など総じて新聞離れが起こっているように思われてならない。また、児童書や漫画など一部のジャンルを除いては売上高減少が止まらない出版物分野では、読書離れが顕著である。書籍もさることながら雑誌に至っては新刊が出ては消えていく短サイクルが目立ち、読者側が溢れるばかりのネット情報へ依存とかスマートフォンなどモバイル端末への依存ばかりが要因ではなく、時代の要求と供給側のアンマッチが感じられる。
この現実を知るほどに創刊70周年の重みがさらに尊いものに感じられるのだ。

ニッチが生むロングテール
専門紙(専門誌)、あるいは業界紙(業界誌)に分類される出版物は明らかにニッチな商品である。異業種の会社を訪問した時に、応接コーナーの傍に置いてあるブックスタンドや新聞ラックを覗くと、初めて見る雑誌や新聞で溢れていたりする。またクリニックや人間ドックの待合室でも一般紙やメジャーな雑誌に混じって、診療科ごとの出版物が置いてあったりして何気なく手に取ると知らない世界の広さを知らしめられたりする。ニッチな分野で活躍しているメディアを見るのは新鮮であり、興味深い。
ニッチな出版物は発行部数こそ少ないが、マイナーなりの固定読者がいるロングテール商品でもある。ブロックバスター狙いの泡沫出版物とは異なり、息が長い。ニッチだからこそ創業以来70年も発行し続けてこられたのではないだろうか。そう言えば、発行部数こそ漸減の現実から免れてはいないがものの、スポーツ紙ダントツの日刊スポーツも本紙と同じ1946年に創刊された新聞だそうだ。
経営者の永年のご尽力に敬意を表し、ニッチらしい歴史を刻み続けることを願い、共に70周年を祝いたい。

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