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「部分最適は、全体最適にあらず?」

髙梨智弘 (日本イノベーション融合学会理事長)

経済産業を支える企業の多くのトップは、多様な社会を認識し、従来型の今の競争に打ち勝つための戦略経営から脱却し、これからの明日の競争を勝ち抜くイノベーション経営への移行を試行している。
一部では、半世紀以上業務プロセスの管理手法として脚光を浴びていたPDCA(計画ー実行ー統制ー改善)サイクルは、「部分最適は、全体最適にあらず!」とその役目は終わったという極端な声も上がっている。
それは、環境が激変しP(計画)自体が無意味になっているにも拘わらず、愚直にPーDーCーAサイクルを回すことは意味がないと全体を見るべきだと。
実は、一面に目を奪われ、形式と本質を取り違えたからだと思われる。
製造工場の工程などの状況や特定の場では、また、通常の管理の場面では普遍的な方法論であることは疑いない。
本題の格言の形式的な一面を捉えて、部分最適を否定し、本質を捉えずに全体最適が良いと、している。
現状の課題は、縦割り組織で横に流れる横断型業務プロセスや部門間を跨いで流れる仕事を、部分の深掘りで良しとする縦割り志向の極端な追究の弊害である。
多くのベストプラクティス企業は、PーDーCーAサイクルのP(計画)自体の時間軸を通常の一年から6ヶ月に、更にはいつでも変更する対応を取り、柔軟な戦略に従って計画を立案している。
本題の格言も、部分最適を否定するモノではない。
企業の目標を達成する上で、必要な範囲を逸脱するコトや、前後の業務との整合性が無くムダなコストを掛けるような全体の流れやレベルを無視した行為を戒めているのであって、全体の整合性に見合った部分の最適は、当に全体最適の一部である。
つまり「全体最適に整合した部分最適は、全体最適に通ず!」である。
ベンチマーキングがベストに学ぶ手法であるにもかかわらず、それを、環境が変化する中で従来型をマネするベンチマーキング手法は意味が無いと強調する論者も身受けられる。
ベンチマーキングは元々、ターゲット目標自体を意味する「ベンチマーク」から由来し、ベストプラクティスに学ぶ、経営変革手法である。
ベストプラクティスは、前述した全体と個のベストな調和を目指す対象であり、なぜベストになれたかのイネイブラーを探求する価値創造の方法論である。
今の競争に打ち勝つための従来型の戦略経営から脱却し、これからの明日の競争を勝ち抜くイノベーション経営への進化を取り込むことが、本来のベンチマーキングである。
部分の最適、全体の最適、部分と全体の相互関係の最適を見極めた戦略と計画が柔軟に実行される活動がなされることで、本来の部分最適は全体最適に融合する。

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