政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


■モデレータ


IPA・SEC(ソフトウェア高信頼化センター)所長 松本隆明氏

■パネリスト


・ミサワホーム総合研究所副所長   栗原 潤一氏
・デンソー技監              村山 浩之氏
・ヤマト運輸執行役員          小佐野豪積氏
・オムロンCTO付オープンイノベション担当  竹林 一 氏

松本:最近、注目されているIoTに関する議論の中で、ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授の書いた「IoT時代の競争戦略」がある。IoT時代、企業が勝ち抜いていくにはどうしたら良いかが書いてある。
その中で、企業が考えるべき選択肢を10個挙げている。今日はその中から4つくらいで議論したい。1つはIoTシステムで何を重視するのか?
2つめは実際のビジネスのところではオープンで行くのかクローズドで行くのか?3つめは、実際の新しいイノベーション機能を提供する時に、自社内の技術でやるのか、外の技術を採り入れるのか?
4つめは、IoT時代に飛び交うビッグデータに関し、どういうデータを何のために使うのかを掘り下げて議論したい。
まず、最初はデータ中心に、こういうデータが取れるからこういうサービスを提供するスタンスなのか、こういうサービスをするためにはこういうデータがないとできないと言った思考で行くのか伺いたい。

栗原:住宅では普通に生活して頂いていればデータは取れている。その生のデータをいかに生活以外の場面で活用できればと考えている。もし、家の中の温度が低い中で生活をしておられる方には、健康のためにもう少し温かい家で生活してもらうような提案したり、空調などを自動で動くものへ変えたほうが良いなど、データを見てご提案できる。
今、住宅の部屋の温度がどのくらいであれば病気になりにくいというデータが集まりつつある。そのエビデンスが溜まってくると、国交省と厚労省が基準を作り始める。そうすると、ビジネスになる可能性がある。

村山:車の場合の価値観ははっきりしている。交通事故と環境問題に負のインパクトがあるのに関わらず、世界中でこれだけ自動車が売れ、受け入れられている商品は他にはありません。
従って、自動車業界の価値観は、この2つの負をIoTであれどんな時代でも追及していくことに尽きる。IoTの議論では自動運転がバズワードになっているが、自動車業界が考える自動運転とIT業界の考える自動運転とは自ずと違ってくる。
例えば交通事故を減らすために自動運転を行う際、何年後、どういう形で事故が減らせるのかと考える時、なぜ今の搭載されている運転支援システムと、いきなり自動運転にして何が変わるのか?
確かに東京オリンピックを目標に自動運転カーは走れるでしょう。しかし、それも非常に条件を限定した場面であり、一体、交通事故はどれだけ減らせるのか?少し懐疑的に考えている。

小佐野:余り話しすぎると怒られますが(笑)、デジタル情報が完璧に取れ、その情報が上流工程から物流に流れてくれば新しい価値が生まれてくると思っている。
例えば、配送情報を取って置くと、災害時に役立つのだ。広島の土砂災害の時に気付いたのだが、住所の移転をきちんと出していない人が多いため、行政の立場からするといるはずの人がいないことが多いが、我々の配送情報では荷物がその人には届く。
携帯キャリアや地図会社のデータを合わせていくと「この時間にこの人は在宅している」ことなどがわかってくると災害時にはとても役に立つ。そういうデータを応用したビジネスを今考えている。
自分達のデータでビジネスを考えると小さいが、行政その他のデータを組み合わせると、価値が2倍にも5倍にも10倍にも広がっていく可能性がとても大きいと考えている。

竹林:IoT時代には、目的があってデータを集める方向と、多くのデータからわかってくる方向、この2つとも必要だ。我々は世界中の高血圧の患者さんを無くしたい。その時にどんなデータが必要かを考えた。
血圧を落とすために、気温の情報がいる。体重を落とすために活動量計や睡眠計も作った。血圧と寝ている間の睡眠状態が関係している。それらを連携させていくと人の血圧は安定し下げられるし、さらに他の基礎データとも連携して行きたいと考えている。
それには目的に合わせ、オープンデータで対応していくことになる。さらにデータを取るとわかってくるここともある。血圧手帳に書き込む数字は何回も測って一番良い数字を書き込む習性(笑)もわかってくる。
温度計の入った血圧計もある。医者はその人の室温データを指導して血圧治療につなげている。だから顧客のデータを取ることによって良くする方法が見えてくる。
だからデータをオープンにして活用し、本来必要なところへデータが回れば、新しいビジネスモデルが生まれてくる。結局、新しい生態系やエコシステムが作れれば良いのだ。ただしそれにはエコシステムを作れるようなプロデューサーが上のレイヤーで必要になってくる。そこが大事で、個々データでビジネスを考えてしまうと、儲かる儲からない議論になってしまうので。

松本:住宅の室温データと医者との連携はどうなっているのか?

栗原:プライバシーの関係もあって各住宅の室温データは活用されていないが取ろうと思えば取れる状況だ。実は、今交通事故で亡くなる人より住宅で亡くなる方のほうが圧倒的に多い。それも血圧に起因していて、室温との関係性を認識している人は少ないのだ。

松本:そういう意味で、本当に業界をまたがった連携ができるからこそIoTにはいろいろなチャンスが広がってきているのでしょう。