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ハード・ソフト両輪での開発が重要 ~連載「デジタル革新と半導体産業」半導体戦略会議メンバーに聞く
デジタル産業やその基盤となる半導体を取り巻く環境が大きく変化する中、日本の半導体産業復活への道筋について、半導体・デジタル産業戦略検討会議のメンバーで、2019年「第5回日本ベンチャー大賞」内閣総理大臣賞を受賞したPreferred Networksの西川徹・代表取締役最高経営責任者に話を聞いた。同社は日本で数少ないユニコーン企業として著名で、非上場ながら時価総額はを超すと言われている。
半導体・デジタル産業戦略検討会議のポイントは?
会議では、今後の産業において計算能力の重要性が増す中、日本が世界で戦っていく、競争力を出していく上では、計算能力の拡大が重要である、という内容を中心的なメッセージとして発信した。
計算能力の確保を実現するために、自社のアクセラレータへの投資はもちろん行いつつ、事業者が 計算インフラを持続的に発展できるようなエコシステムを作っていくべきといった戦略的な話もした。
加えて、消費電力を抑えつつ、計算効率を上げていくことが重要だ。そのためにはハードウェアとソフトウェアを一体として開発していくことが不可欠だ。
半導体産業凋落の原因は?
GPUの分野でNVIDIAが世界的な地位を築いた経緯を見ると、優れたハードウェアとともにソフトウェアへの投資も大きい点が挙げられる。
アプリケーションあっての半導体だ。アプリケーションを書くためには使いやすさも必要で、ハードウェアの上のソフトウェアスタックが洗練されていることも重要になる。
ハードウェアとソフトウェアのバランスを良くとっていくことが、今後の半導体戦略を考えていく上で重要だ。
半導体「MN-Core」について
深層学習用スーパーコンピュータMN-3に搭載されているプロセッサ「MN-
Core」(写真)は深層学習に特化したプロセッサとして開発をスタートした。演算機を詰め込み、コントロールの部分を単純化した設計だ。逆に言うと、ハードウェアの性能を最大に引き出すために、制御するソフトウェアの方で頑張らなければならない。
ソフトウェアのエンジニアが深いところまでハードウェアを理解する、ハードウェアのエンジニアもソフトウェアの要件を理解して設計に落とし込んでいくことが重要だ。ソフトとハードのエンジニアが同じチームとして活動していくことでギャップを埋め、システム全体として最適を目指すというのが、我々のアプローチだ。
長期的なロードマップは明確になっている訳ではないが、現在のプロセッサを元に次のプロセッサを作り、のせるソフトウェアを洗練させるということを繰り返していくこと、世代を重ねていくことが重要だ。
AI・深層学習の分野はどんどん手法が進化しており、手法に合わせてプロセッサのアーキテクチャを進化させていくことも必要だ。技術の進化はとどまるところを知らず、化学プラントの制御や原子シミュレーションなど、応用分野もかなり広がっている。
量子コンピュータは視野に?
将来的には 関わってくる分野だと思っているが 量子コンピュータは基本的なエレメントを実現しようとしている段階で、実現はまだ先のことだろう。
量子コンピュータがターゲットとしている 領域でも 既存の技術、半導体上で実現できることがある。問題の解き方、アプリケーションの開発は既存技術で行い、それがいずれ量子コンピュータに置き換わっていくイメージだ。
半導体産業復活に向けて
国を挙げて半導体に取り組んでいく中で、深層学習がゲームチェンジャーの1つになると考えている。我々のようなスタートップにとっては大きなプレーヤーに勝つことができるチャンスにもなる。
コンピュータ・サイエンスの考え方も変わり、データがプログラムを作っていく時代が到来すれば、プロセッサのアーキテクチャにとどまらず、システム開発の方法論自体も変わっていくだろう。
こうした時代背景がある中で、半導体に大きな投資が集まることは非常に歓迎すべき状況だ。
一方で、深層学習 はブラックボックスの部分が残っており、そこを制御可能にしていく取り組み が必要だ。新しい課題は次々にでてくるが、そういった変化を引き起こすための 基盤技術を磨き、引き続きノウハウを貯めてゲームチェンジをしていくことが重要だ。
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