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2018/04/04

TMDU、創生医療に挑戦  脱細胞化生体組織材料で、臓器再生に光明

恒例となってきた東京医科歯科大学(TMDU、吉澤靖之学長)の記者懇談会で、「創生医学における脱細胞化生体組織の現状と課題」について、生体材料工学研究所生体機能修復研究部門の岸田晶夫教授(物質医工学分野)が講演した。

吉澤学長は「本学は再生医療から創生医療に挑戦している。人工血管などのデバイスは、移植が成功しても、布製のため破損や脱落、感染などが起きてしまうことがある。創生医学コンソーシアムの中の医歯工連携ものづくりの成果である脱細胞組織開発の最先端技術を紹介したい」と挨拶した。

岸田教授が脱細胞化生体組織について、「脱細胞化とは、動物の組織から免疫源となる細胞成分を除去した組織のことで、米国ではすでに実用化し43種類の製品が市販されている」。

元の生体組織に近い特性を有し、免疫拒絶反応が少ないことから、「血管、心臓弁、皮膚、骨などテーラーメード医療の、再生用足場材料として注目され、世界でも論文数が急増している」発展途上の技術である。

TMDUでは、高静水圧印加処理(1万気圧=マリアナ海溝の10倍の気圧)を使い、真皮、肝臓、大動脈、血管、腎臓、角膜などの脱組織化を実証実証し、脱細胞化ブタ角膜のウサギ眼への移植や脱細胞化組織粉体による心筋組織再生、ラット腎臓の臓器再生などに成功している。

日本の課題について、「わが国では再生医療は細胞を使うという縛りがあり、免疫反応のハードルが高く、中々進展しなかったが、この脱細胞化組織は、移植直後から機能が発現でき、低い異物反応(生体適合性)からバイオマテリアル再生医療の候補材料として注目されている」。

「今後は医療デバイスとしての一般化(品質評価法の統一、滅菌・保管・輸送法の確立)、臓器再生足場材料としての応用、国際競争への対応などに対応して欲しい」として国への要望を訴えいた。