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対談「持続可能な社会に不可欠なロボット産業」 ~経済産業新報・産業機械シリーズ特集
~ロボット工業会発足50周年記念~
対談<持続可能な社会に不可欠なロボット産業>
日本ロボット工業会が設立50周年を迎えた。これまで世界のロボット産業をリードしてきたが、今後のゆくえはどうなっていくのか?業界を見続けてきた弊紙が企画して、記念の対談を行った。(本紙編集主幹・高橋成知)
<対談出席者>
経済産業省製造産業局産業機械課長 安田 篤 氏
社団法人日本ロボット工業会会長 山口 賢治氏
<司会>
同日本ロボット工業会専務理事 冨士原 寛氏
司会 (一社)日本ロボット工業会50周年を記念して、わが国のロボット産業のこれまでの歩みと今後の展望について議論していきたい。まず始めに、世界をリードするロボット大国になぜ成長できたのかから始めたい。
山口 日本のロボット産業が強くなった要因は3つが挙げられる。
1つめは、使うお客様が強力だった。すそ野の広い自動車産業や電気・機械産業がロボットの導入を促進し、産業の育成に寄与したことが大きい。特に自動車産業は導入に熱心で、メーカーに仕様を的確に示し、一緒になって開発してきたことが我々産業にとっては有難かった。2つめは、ロボットにとって重要なキーコンポーネントであるサーボモータ、減速機、センサーなどの部品が日本には非常に厚く存在した。そして、メーカーが一体となって性能向上に努めたことで、一層の正のスパイラルが働いた。3つめは、日本には多くのロボットメーカーが存在し、各社が切磋琢磨、競争したことにより技術が進んだ側面も大きい。
司会 政策面でロボット産業支えてきた経済産業省の政策が大きかった。ここ十数年で政策のあり方が変化してきたように思う
安田 最近10年間で大きく2つの政策の転換点があった。1つめは、2015年にロボット新戦略を作り、ロボット革命というキーコンセプトを打ち出した。日本をロボットイノベーション拠点とする、ロボット利活用社会を作る、AIやIoTも組み合わせながらロボットで世界をリードしていく、3つの施策を打ち出した。さらに、それを加速させるため2019年に、ロボットによる社会変革推進会議を開き、4つの柱を立てた。1つめは、利活用をさらに進めるロボットフレンドリーな環境の構築、2つめが産学が連携した人材育成、3つめが中長期の研究開発促進、4つめが幅広く知見を取り入れていくオープン・イノベーション。これらの柱を加え、政策を推進してきている。
司会 直接的な産業振興策から利活用社会実現に向けた政策へと視点が大きく変化してきた。
安田 以前はメーカー向けの施策が主だったが、15年からはユーザーをサポートし、利活用社会を目指す方向に大きく変わったと認識している。
22年に1兆円を超える見通し
司会 これまでロボット産業は成長を続ける中で1兆円産業を目指してきたが、過去何度も世界経済の大きな変動を受けて、なかなか「1兆円の壁」を越えられなかった。それがここへきて産業用ロボットの出荷額でようやくその壁を越えられるところまで来た。業界としてこの状況をどう見ているか?
山口 2021年に受注額で念願の1兆円超えを達成した。出荷額では、2022年に1兆円を超える見通しだ。生産額では2023年に一兆円を超える見通しで、これから先もっと伸びる産業だと思っている。
(中略)
ロボットフレンドリーな環境を
司会 グローバルな話題ということで、これからの国際社会が目指すべき大きなテーマとしてSDGsがある。持続可能な社会に向けてロボットはどう貢献できるだろうか?
山口 日本は少子高齢化が世界で1番早く進む社会の一つであり、労働人口の減少が大きな問題である。気候変動による自然災害の多発、社会インフラの老朽化、資源エネルギーの不足、食料自給率の海外依存の状況など、様々な問題が顕在化している。当業界は、ロボット技術を課題解決型の技術と位置づけ、諸課題に対しロボット技術をさらに進歩させることによって解決し、持続可能な社会に貢献していきたいと考えている。
工業会では今、2050年に向けたロボット産業ビジョンを作成中で、近々発表する予定だ。例えば、夜間の作業をロボットが担うことができれば設備の有効活用に繋がり、社会に貢献できる要素はあると思う。ビジョンに期待して頂きたい。
司会 ロボットが社会に貢献していくためにも、政府が提唱するロボット・フレンドリーな社会の実現が不可欠。具体的にはどういう方策が必要か?
安田 ロボットに対する過剰な期待があると、何でもロボットに任せようとし、コストがかかり、開発時間がかかってしまう。ロボットができることに絞りやってもらうためには、ロボットが動く環境を変えることで解決するため、ロボット側と環境側とをキチンと切り分けて考えていく。
ポイントの1つは体制を作ること。ユーザーとメーカーが一緒になって、ロボットフレンドリーな環境を作っていく体制を整えている。2番目に大事なのはどういう環境を標準に作れば、ロボットが稼働しやすいかを考えること。ユーザーとメーカーで合意して進めていくことが大事である。
一般論では中々進まないので、施設管理、物流、食品など、人手不足に悩まされていて、かつ自動化の余地が大きい分野を選択して取組を進めている。具体的には、ユーザーとメーカーが集まる体制を作り、ロボットがエレベータに自動で乗り降りしたりできる、1つの標準インターフェースを作った。成果として出てきているところだ。
(以下略。全文は経済産業新報・本紙で。電子版試読キャンペーン実施中。)