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2023/01/20

始動し始めた半導体産業復活への道 ~次世代半導体の開発戦略

日本の半導体産業の復活に向けて、技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)とRapidus(ラピダス)株式会社が新たに設立された。そこで、経済産業省商務情報政策局の金指壽情報産業課長、LSTCの東哲郎理事長、ラピダスの小池淳義代表取締役社長を招き、「次世代半導体の開発戦略」をテーマにオンライン対談を行った。

 


 

日本版NSTCを設立へ

 

―半導体産業復活に向けた現状

 

金指 経済産業省は2021年11月、半導体産業復活の基本戦略としてステップ1、2、3という行程表を公表した。2022年6月17日には、台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループ、デンソーが熊本県で建設中の工場に4760億円の支援を行うことを決めた。7月にはキオクシアと米ウエスタンデジタルとのジョンイトベンチャーに対する、9月には米マイクロン・テクノロジーについても支援を決定し、製造基盤の確保を目的としたステップ1について少しずつ足下を固めてきた。

 いよいよ次世代半導体技術の開発を目的としたステップ2に向けて、5月には萩生田経済産業大臣(当時)が渡米し、米国と半導体協力基本原則に合意した。そして、11月11日に日本版NSTC(米国立半導体技術センター)のLSTCとラピダスを車の両輪として次世代半導体プロジェクトを進めることを公表した。

 一方で、この公表にたどり着くまでに、約2年間、東さん、小池さんを中心に民間の有志が半導体産業の将来について議論してきたと承知している。

 

世界の半導体市場

 

―議論のきっかけ

 

 約3年前に米IBM社から最先端のロジック半導体について一緒に考えようというオファーがあったのが議論を始めたきっかけだ。日本は最先端のロジック半導体について遅れをとっており、どうやって挽回すべきか大きな課題であった。

小池 日本はメモリ半導体、特にNANDフラッシュで頑張ってきたが、ロジック半導体については15年以上遅れてしまったのが事実だ。東さんから相談を受けた時、IBMのオファーはチャンスだと感じた。若い世代を集めて日本の半導体産業の将来について毎週、議論を重ねてきた。最初のうちは「手遅れだ」、「もうどうにもならない」という意見もだいぶあった。3、4か月も議論を重ねていくと、「やらなければならない」というメンバーが残り、様々な試案をとりまとめ始めた。

 ただし資金を持っている訳ではないので、世界中の国が官民一体となって次世代ロジック半導体の開発を進める中、国の支援が必要だと経済産業省に相談したのが第1章だ。

 

―第2章

 

小池 米IBMで3~5年勉強し、日本にファウンドリを作るという構想には10年くらいの計画が必要だ。どのくらいの予算規模が必要か検討を行った際、東さんが「当然に兆円オーダーの資金を意識しないとダメだな」と言った。これは重要なことで、そのくらいの世界観と規模で戦わないといけないということを確信した。具体的な計画をまとめ、経済産業省や政治家に理解いただけるシナリオを作ったのが第2章だ。

 シナリオを作る上で、基盤を考えることが非常に重要であった。技術陣という意味では、小池さんが集めた人材を全面的に信頼している。一方で、政府の強力なサポート、財政的な裏付け、日米連携に向けた関係構築が必要だった。こうした環境を整えていったのが第2章だ。

 

―LSTCの役割

 

 LSTCは、産業基盤を成長させていくための基盤づくりという意味において、従来の開発組織と比べると、明確に事業化、産業化を目指した開発を行うという点が違いだ。

 新しく開発・事業化していく会社とタイアップして、各分野でLSTCと会社が協調していく枠組みを構築した。設計や組立など、更に新たな産業を産むことも視野に入れ、サポートを行うのがLSTCの大きな骨格だ。

 

グローバルなプラットフォームが必要

 

―ラピダスの活動構想

 

小池 設計支援やパッケージなどの各分野について約10名のチームを3~4部隊作り、IBMの研究施設があるアルバニーに送り込もうと考えている。早いチームは2月頃から、本格的には3~4月から動き始めることになるだろう。

 現地で試作をメインに行う分野、設備に絡むような分野ではチームが常駐することになり、日本にエレメントを作るチームなどは日米の間を行ったり来たりするようなイメージだ。

 

―imecとの連携

 

 ベルギーの研究機関imecの大きな特徴は、半導体の製造プロセス、特に最先端のEUV露光装置について様々なノウハウを有している研究機関であるということだ。我々が今後、デバイスを作っていく上で、こうしたノウハウは重要で、imecとの連携は必須だと考えている。私は東京エレクトロン出身だが、同社はimecでオランダのASMLと協力している実態があり、imecとの連携はマストだ。

 

―オープンプラットフォームとの違い

 

金指 日本の半導体産業の反省点として「日の丸」や垂直統合にこだわったことが挙げられる。一方で、国際的な非営利研究機関であるimecはオープンプラットフォームの代表例だ。過去の日本に足りなかったもの、オープンプラットフォームとの違いは何か。

 はじめから見方が違っていたということだ。世界レベルのナンバー1になるためには、世界のすぐれたタレントを集めないとダメだ。日本にいて日本をオープンにするというような感覚ではなく、グローバルなプラットフォームを作り中に入っていくイメージだ。LSTCも、そのような組織づくりを常に心がけていかなければならないと考えている。

 

―人材確保に向けて

 

小池 人材の採用に当たってはダイバーシティ的な発想が非常に重要だ。

 若い世代の育成については、教育機関との連携が必要で、ぜひLSTCと一緒にこうした連携を進めていきたい。多くの場合、才能は小学生の時に決まってくる。そこで、小学校から世界に貢献できる半導体を学ぶような体制を構築したい。単に大学で優秀な人材を採用するというのではなく、真の意味でしっかり勉強し、夢に向かって進んでいくような人材を集めたい。時間はかかるが、取り組んでいきたいと考えている。

 ミドル世代については、柔軟な発想を持ち、新しいことにチャレンジしたいと考えてい人材も多い。今まさに、こうした人材に声を掛けているところだ。海外に出てしまった人材も多いが、そうした人材にも声を掛けていきたい。

 

ポイントはグローバルな視点

 

 シニア世代については「もう一度頑張ってみたい」という人材も多い。日本の素晴らしい半導体時代を経験した方々にも、ラピダスに入っていただきたい。

 ポイントは、グローバルな視点が必要だということだ。日本には半導体のモノづくりに適した文化と仕組みがあるということがラピダスのポイントだが、人材は日本だけでなく、世界から優秀な人材を集め、広い視野で進めていきたい。

 

―ユーザーサイドの巻き込み

 

金指 経済産業省では産業政策を進めていくが、半導体産業だけでなく、ユーザーサイドを意識した活動も必要だ。

 例えば、米スタンフォード大学では、ユーザーと研究者が一体となって、非常に自由な雰囲気の中でアプリケーションを検討するミーティングを定期的に開催している。ユーザーとの関係を徐々に築いていく中で新しい価値が生まれる。

 日本の場合には、かなりのハンディキャップがある。ロジック半導体について見ると、ユーザーが最先端のテクノロジーに十分に接することができる体制にはなっておらず、既存技術をいかに応用していくかという点にフォーカスする構造になっている。ユーザー側が新しい技術に接しながら、新しい価値を創造するモチベーションをあげていくことは、LSTCにとって非常に重要で、海外との交流も含めて積極的に取り組んでいかなければならない。

 アプリケーションと設計の部分の基盤が弱いので、LSTCとしてもアカデミアや産業界と知恵を出し合って強化に向けた検討を行いたい。

 

―国に対する要望

 

金指 半導体産業復活の基本戦略は、間違いなく最も壮大で時間をかけて大切に育てていくプロジェクトだ。経済産業省としても踏み出す部分は一歩踏み出して、引き続き政策的な対応を続けていきたい。

 

あらためて政策面のニーズは

 

 現在、研究開発に対する予算支援という形で直接的なサポートを受けている。米国や台湾など世界では、政府が表に現れない形でインフラ的な基盤づくりや民間の関係機関の巻き込みなど実質的なサポートをおこなう仕組みも構築している。直接的に資金を出すだけでなく、実質的なサポートを受けられる仕組みが構築されることで、民間が自立していけるような体制を作っていくことが非常に重要だ。

小池 世界をじっくりと眺めた時に、日本が果たすべき責任と貢献は何かを考えることは重要だと思っている。今回、政府も含め、多くの方に理解をいただいて次世代半導体の開発戦略を強力に推進していただけていることには心から感謝している。

 推進していく上でキーとなるとのは、スピードだ。もちろん10年、20年、もっと先の大きな方向性を見据えつつではあるが、実現できることを素早く実現していくスピードが重要だ。様々なシステムを変えていかなければダメだと考えている。国にも、これを機に変えられる仕組みは思い切ってスピーディに変えて頂き、一緒に新たな枠組みを創り上げていきたいと思っている。

 

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