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生成AIは黎明期、日本にもチャンスが ~経産省 渡辺琢也室長インタビュー
日本のソフトウエア産業を所管するポジションにいるが、SIer中心の日本のソフト産業は今後変わらなければ、どんどん先細りとなると予測する。
「GFAMがクラウドを使って、プラットフォーム(PF)を提供しており、個別の作りこむソフト開発が少なくなる。PFを使った方が、生産性が上がる。また、直接、日本のユーザーがGFAMに繋がるので、日本のソフト会社はより生産性が上がる提案力とコンサル力がないと生き残れなくなるだろう」と答えるのは渡辺室長(経済産業省商務情報政策局情報産業課 ソフトウエア・情報サービス戦略室長 渡辺琢也氏)、44歳。
「今、生成AIが話題となっているが、内燃機関の登場を第1の革命とすると第2の革命はインターネット。生成AIは第3の革命と呼ばれており、我々はその黎明期にいる」。
そのトップを走っているオープンAIの代表はまだ38歳に過ぎないが、とてつもないインパクトを世の中に与えている。生成AIの肝は、大量のデータとAIスパコンから生み出されるAIモデル開発である。
「マイクロソフト社が出資しているオープンAI社は大規模なAIスパコンを持ってAIモデルの開発を進めている」。
日本にも産総研にAIスパコンがあるが、スケールは10分の1以下であり、しかも3千者が活用しているため、規模としてはまだまだ小さい」。そこに挑戦しようとする会社が現れた。
さくらインターネットはまず、2エクサフロップス規模のAIスパコンを北海道・石狩データセンターに整備する。総工費は130~140億円。
「先日、西村大臣と視察してきた。経産省は総工費の半分を補助することを決めた」。巨大となったGFAMに一矢報いようとする日本のベンチャー企業を支援していく方針だ。AIスパコンの中心にはやはり専用の高速半導体チップが必要となる。日本として復興を目指す半導体政策にも関連する。
「今のAIデータの基本はWeb上の情報が中心。しかし、世の中には自動車や半導体、化学製品などのものづくりや様々なサービスなど、現場のデータが日本にはたくさんある」。
良質のデータがなければ、より良い答えも導き出せない。「例えば、車の設計データを生成AIが生み出してくれれば、いろいろな実験や研究設備がいらなくなり、驚くべき生産性の向上が期待される」。
現場のデータを使って専用の生成AIを作ってくれるベンチャー企業が現れている。ABEJAというスタートアップは先日上場した。若者が集まっている会社だ。
「今は生成AI黎明期で、世界中で研究開発競争が起きている。先生がいない全く未知の領域。次に何が出てくるか予想すらできない。これはある意味、日本はゲームチェンジのチャンスでもあり、とても面白い時期に政策に携われており、とても興奮しており楽しみだ」と語ってくれた。
<わたなべ たくや> 兵庫県出身、灘高を経て東大工学部から大学院卒後、2004年経産省入省。エネ庁を皮切りに官房の法令審査などを経て2021年に現職。学生時代は本格的にソフトボールをやっていた体育会系だが、娘4人には教えない教育方針でいる。
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