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2023/07/03

環境や社会課題解決に広がる「自動制御」 ~42年ぶり、横浜でIFAC2023 

 42年ぶりに日本でのIFAC2023(国際自動制御連盟)の世界大会が7月9日から14日までの6日間、パシフィコ横浜で開催される。ロボットやドローンから今や環境・社会システムまで応用が広がってきている「自動制御」の研究者が3千人集結するIFAC。その会長を務める淺間一教授(東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻 教授)に、会議の意義と現況、展望を聞いた。

 


 

 自動制御という技術は、時間とともに状態が変化するものやシステムを、今の状態をセンシングしながら、何らかの操作を行い、自動的に目標の状態に近づけようとする技術である。例えば、エレベータにセンサーを付け、その計測に基づきモーターを動かし、目標の階に止める、というのに自動制御技術が使われている。

 

IFAC2023のご案内

 

 IFACのロゴには、左(入力)から右(出力)への矢印と、途中から左に戻る矢印が描かれており、これはフィードバックを表している。さらに、賢くなするには、フィードバックした情報をもとに、先読みをして動かすようにする。これはフィードフォワードという、将来の変化を予測しながら動かす技術であり、今や機械システムから電力システム、セキュリティシステム、スマートシティ、地球環境問題まで、その応用範囲はものすごく広がってきている。

 

 自動制御は、電気系や機械系の制御理論の専門家中心の研究分野であったが、最近はコンピュータサイエンスやAI、環境、エネルギー分野の人達も増え、横断的な分野となりつつある。

 IFACの活動分野は全部で9つのコーディネイティング委員会に分かれているが、基礎・制御理論から、メカトロやロボティクス、さらには製造業、電力システム、輸送システム、バイオなどへの応用、環境・エネルギーなどの社会課題まで、幅広い分野をカバーしている。

 今回の会議では、日本の「わ」をテーマとした。「わ」には、和、輪、環など漢字がある。自動制御、ネットワーク、コミュニケーションにより、持続的発展など、社会課題を解決し、社会の新しい価値を創造していこうという願いを込めている。

 

 自動制御は、ロボットをはじめ日本が非常に得意とする分野であったが、最近は中国に追いつかれ、あるいは追い抜かれている感すらある。特に社会実装では、中国の方が圧倒的に積極的である。安全から入る日本とは対照的であり、比較にならない。国も、日本の競争力強化のための政策をしっかりと打っていく必要があると思う。

 会議のメインはテクニカルセッションで、査読に通った研究論文が27室に分かれ発表される。また、今回の社会課題解決のテーマに合わせ、曜日ごとに、脱炭素、高齢化、ポストコロナ社会における強靭化、デジタル社会、AIなど、テーマを決め、その専門家の基調講演と各セッションなどが設けられている。

 その他のハイライトイベントとしては、各種市民、横浜-富津間のドローン輸送レースや、海中ドローンの実演などを予定している。ぜひ注目して頂きたい。

 

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