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25年には「LNG争奪戦」のピークが ~2023年エネルギー白書まとまる
資源エネルギー庁は、このほどエネルギー白書2023を発表した。内容は、(1)福島復興の進捗、(2)エネルギーセキュリティを巡る課題と対応、(3)GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた課題と対応、4つのポイントを紹介している。
福島の復興では、2022年6月以降、葛尾村・大熊町・双葉町・浪江町・富岡町・飯舘村の特定復興再生拠点区域の避難指示を解除した。特に双葉町では、同年8月に震災後初の住民帰還が可能となった。
ALPS処理水の処分については、23年1月の関係閣僚等会議で、具体的な海洋放出時期を「本年春から夏頃を見込む」と示した。
溶けた燃料が冷えて固まった燃料デブリの取り出しについては、水中ロボットを活用した原子炉格納容器内の調査が進んだ。
世界のエネルギー事情が一変
エネルギーセキュリティに関しては、ロシアによるウクライナ侵略が発生し、エネルギーをロシアに依存していた欧州が、急速にLNG輸入を拡大させたことで世界のエネルギー情勢が一変、エネルギー価格が高騰する危機的な事態となった。
例えば、ドイツの天然ガスの輸入物価は、平時に比べて一時10倍近くまで急騰した(20年1月比)。今後も欧州のLNG需要は今後も高まる見通しだ。
世界的な「LNG争奪戦」は25年頃をピークに、短期間では終わらないと見込まれている。23年4月のG77札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」の閣僚声明でも、天然ガス・LNGの必要性が示された。
日本でも、天然ガスの輸入物価が約2倍に上昇(20年1月比)し、電気料金等も高騰した。日本はLNGの多くを長期契約・油価連動で調達していることなどもあり、欧州ほどの上昇幅にはなっていないものの、オイルショック以来のエネルギー危機が危惧される緊迫した事態に直面した。
GXについては、エネルギー安定供給を確保するとともに、欧米では国家を挙げて、脱炭素に向けた投資促進策を講じている(米国のインフレ削減法による50兆円規模の支援等)。
日本でも、エネルギー安定供給の確保を大前提として、産業競争力の強化、脱炭素の同時実現に向けて、23年2月に「GX」実現に向けた基本方針」が閣議決定された。
「GX実現に向けた基本方針」の概要
エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力等のエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換等、GXに向けた取組を推進する。
今後10年間で150兆円を超える官民GX投資を実現するための「成長志向型カーボンプライシング構想」を実現・実行していく方針が示された。
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