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書評「「無料塾」という生き方 ~教えているのは希望~」小宮位之著
善意で成り立っている八王子つばめ塾が全国に広がりつつある。2022年の国民生活基礎調査によると、子どもの貧困率は11・5%。小学校1クラス35名とすると、クラスに3~4人は貧困状態にある。
一方、高校進学率は98・9%。この経済的苦しさが「本当は高校に行きたいのに金銭的理由で通えない」子供たちが15%くらいいると推論できる。
著者は貧困家庭で育ち、やっとの思いで大学を卒業し、就職したが、映像制作の仕事でレバノンやウガンダに行くと、「貧困が貧困を呼ぶ負の連鎖」を目の当たりにした。それを変えるには「人を育てる」しかない。幸い自分には教師の資格がある。義母の支援もあり、仕事を「経済的に苦しいご家庭の中学生、高校生のための無料の学習支援」のボランティアに変えた。
現在、認定NPO法人八王子つばめ塾の理事長となっている。当初の教え子が大学に進学し、ボランティア講師としてつばめ塾に帰ってくる。渡り鳥のつばめが成長してくると育巣立ったところに戻ってくる習性がぴったりのネーミングとなっている。現在、ボランティア支援者や講師が200人にまでなっている。世の中まだ捨てたものではない。
入塾の条件は3つ。①家庭が経済的に困難であること、②ほかの有料塾に通っていないこと、③本人が「勉強したい気持ち」があること。つばめ塾の価値は、生徒への学習機会の提供にあり、国や市からの表彰や助成は一切受けつけていない。
経済格差と学習格差の連鎖を断ち切るために立ちあがった小宮氏のもとには見学者が後をたたない。その人たちが自らの地域につばめ塾を開設、弟子と呼ぶ仲間が40団体ほどに増えている。この問題は日本の構造問題であり、「有料塾」を見直すきっかけになるのではないか、と感じた。
データ:「「無料塾」という生き方 ~教えているのは希望~」小宮位之著(ソシム 刊)定価1,430円(税込)
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