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2024/06/28

調査データを充実させる建機工 今後もデータとファクトに基づく政策提言を ~日本建設機械工業会・小山智専務理事

 建設機械工業会は、コロナ禍の下、委託調査事業に取り組み、今年で3年目に入っている。この調査でわかったことなどを神谷町の新事務所に移転したばかりの同工業会の小山智専務理事(こやまさとる、写真)に伺った。

 

―この事業で分かったことを教えて下さい。

 何よりも日系建設機械メーカーのグローバルプレゼンスの高さが改めて明らかになった。建設機械産業は輸出比率が7割を超え、年間3兆円近い貿易黒字を計上している競争力のある産業であるが、KHL社が毎年公表している建設機メーカーのトップ50社の売上高でみると2022年の日本メーカーのシェアは26・1%(約7・9兆円)と世界1位であった。トップ50にも10社がランクインしており、機械産業の中でも極めて国際競争力のある産業となっていることが明確になった。

 

建機世界順位

 

―委託調査事業では?

 令和4年度から開始し、会員企業の要望を踏まえて内容を決定し、4,5年度にそれぞれ4事業を実施した。
 4年度においては、①建設機械のカーボンニュートラル(CN)対応に関する動向調査、②製造工程におけるCNの実現に資する技術動向調査、③前記の中期展望・世界における日本メーカーの位置づけの調査、④建設機械業界におけるコンプライアンスに関するQ&A集の策定の4事業である。

 

―4年度事業でわかってきたことは?

 CN対応に関しては、日米中、欧州、アジアの計9カ国におけるe-fuel、電動化、水素利用(燃料電池等)に関する技術動向とともに、関連する法規制・規格、支援策などを把握し、基礎データがまとめられた。
 製造工程におけるCN技術動向においては、各国のCN対応の実例、製造段階での新技術動向(電力使用、熱処理、塗装、CO2・廃熱回収)を調査した。
 また中期展望では、世界における日本メーカーの位置づけや、CN対応が建機業界に及ぼす影響等を調査した。平成25年に作成した独禁法Q&A集を、その後の法改正やコンプライアンス意識の高まり等を踏まえ補足・最新化した。

 

―昨年度は?

 引き続き4つの委託事業を行った。まず、市場投入が加速すると予想される電動機器、代替燃料の実態調査、2つ目が世界的に期待されているペロブスカイト太陽電池の実態調査である。3つ目が業界共通の課題であるサービスマンの採用、定着確保。他業界にも調査を広げ、採用ルートや学生が重視する要件、離職実態(理由、転職先等)を調べ、業界及び各社が行うべき対応をまとめた。4つめは国内における建機の稼働台数の実態調査である。建機には登録・車検制度がないため、精緻な統計が存在していないため、ヒアリング等の調査で、残存率を推定し、稼働台数の推計を行った。対象機種は、油圧ショベル、ホイルローダー、クレーンの3機種。

 

―これらの事業の効果は?

 各国との比較を含め、関連法制、規制・規格、技術動向、各国の製品事例、それらを踏まえた施策提言等を具体的かつ網羅的に取りまとめられた。CN要望の内容具体化とともに、政府側の施策検討にも役立ったのではないか。今後もこれらのデータやファクトに基づく政策提言を続けていきたいと考えている。
 また何よりも、昨年度を含めこれらの調査報告書の内容が、会員各社の皆様の経営戦略、技術開発戦略などの御検討の一助になればうれしい。

 

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