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情流潮流 日本を素通りする若年労働者<上>
ぬか喜びの最低賃金上昇
物価と人手不足による人材獲得競争を背景に、日本では最低賃金が全国加重平均で1055円になったと大きく報じられた。過去最高の5・1%アップである。
日本だけ見るとうれしいニュースだが、海外と比較すると、先進国では最低水準なのである。既にオーストラリアの時給は2241円(2024年1月)、ドイツも英国も日本の2倍近い。カナダや韓国も日本より時給が高くなった。
若者は賃金に敏感だ。規定を満たしてワーキングホリデーを使えば、3年間滞在できる。今一番日本人に人気があるのが、既に約1万5千人が渡航しているオーストラリアだ。円安を背景に「出稼ぎバブル」が起きているという。
わが国は働き手である生産年齢人口比率(15歳-65歳)が1990年代をピークに下がり続けている。老齢人口(65歳以上)は2060年には37・9%に達し、昨年の出生数は過去最少(75・8万人)を記録し、ますます老齢大国へまっしぐらに突き進んでいる。
その人手不足を補おうと、わが国は90年代に「技能実習制度」を作り、労働力不足を外国人に依存してきた。昨年の外国人労働者204・8万人と11年連続で過去最高を記録した。
経済成長の結果、最近は中国からの労働者が減り、現在はベトナムからの技能実習生が6万8000人と最多となっている。そのベトナム人の渡航先の1位が韓国になりつつある。カナダ、台湾、ドイツ、UAEも人気になってきている、という。
形骸化が激しい技能実習生制度
技能実習生制度は、建前は日本の技術や知識を学び、帰国後自国の経済発展に役立てることであったが、実態は単純労働者不足を補うためのものであった。
そこに、ブローカーが入り込み、渡航費用を借金して日本に来る実習生が後を絶たなかった。技能実習生への劣悪な住環境や低賃金、送り出し機関への法外な手数料支払いなど米国の人権売買報告書では「日本は強制労働の国」と指摘されている。
その点、韓国は、日本を反面教師に国の機関同士で採用を行う「雇用許可制」を採用し、ブローカーの入る余地をなくした。韓国の賃金は既に日本を上回っており、円安から韓国で働く方が仕送り額も多く、K-POP人気もあり選ばれているそうだ。
以前、東京に事務所のあるベトナム専門の送り出し機関の代表のベトナム人社長に話を聞いた。「ウチは日本語教育をしっかりやってから日本に派遣するのだが、建設業には絶対、送り出さない。使う言葉が酷く、扱いも奴隷並み。日本に憧れて来たのにがっかりする若者が多い」。今は、介護関係や工場作業員を中心に派遣しているとのことだった。(つづく)
(本紙編集主幹・高橋成知)
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