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インフラ輸出戦略、KPIの再考を~経済産業省インフラ海外展開懇談会 最終案
企業を支援するインセンティブ必要
経産相の諮問機関として設けられた、「インフラ海外展開懇談会」(座長・豊田正和一般財団法人日本エネルギー経済研究所理事長)が最終とりまとめ案を公表した。
懇談会では、日本企業の海外展開の促進と経済成長の実現に向けて、今後一層、産業競争力向上を図るべき分野として、「デジタル」及び「エネルギー」の二つの分野を選定の上、有識者との議論を実施した。
インフラシステム輸出については 2020年に30兆円の受注を獲得するという政府の成果目標(KPI)が掲げられ、最新の成果実績は 2018 年には 25 兆円に達しており、増加基調を維持しているが、その増加率は、世界の市場成長率の伸びに追いついていない。
さらに、世界経済における日本のプレゼンスが回復できていないことについて、振り返って考える必要があるとして、第1にKPIの再考を提言している。
現状の「インフラシステム輸出戦略」は、インフラに係る海外需要の取り込みによるわが国の経済成長の実現を主たる目的とし、単年度での受注額を目標としているが、今後は、インフラの価値変容や複合的効果、及び質の変化等も踏まえたKPIを設定することが有効である。
第二に、日本企業のインフラ輸出を支援していくために、SDGsの実現に資するような質の高いインフラと認められる案件には、例えば、NEXIの提供する貿易保険で一定のインセンティブを付与する等、ファイナンス上の後押しも有効である。
加えて、インフラプロジェクトに対するファイナンス面では、新型コロナウィルスの流行や地政学的環境変化によって顕在化した新たなリスクへの対応策を検討するとともに、展開先のニーズを踏まえつつ、現地人材育成支援、日本企業のサプライチェーン複層化・多元化への支援等を通じた相手国政府・国際金融機関との連携強化によって、わが国の貢献のレバレッジ効果を向上させることも検討していく必要がある。
インフラ海外展開の議論の中で論点となるインフラの質の高さについて、今後ますます重要となる視点は、「持続可能性」、「強靭性」、「安全性」である。
欧州では、新型コロナウィルス感染拡大による経済の落ち込みから回復するため、気候変動対策に資する脱炭素・低炭素産業への投資を促す等、「グリーンリカバリー」を目指している。このように、カーボンニュートラルに向けて、世界中でビジネスチャンスが拡大する中、日本の優れた技術を活用して世界の脱炭素化に貢献していくことも重要である。
日本政府としても今年 10 月に「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」との方針を表明した。同方針を実現するためには、再生可能エネルギーや原子力等の既存技術を最大限活用するとともに、水素等の新たな技術の実現・普及にも産官学を挙げて取り組む必要があり、またこうした排出削減技術の開発・実証にあたっては、国内のみならず海外との連携も重要である。特に、水素・蓄電池・カーボンリサイクル・洋上風力等のカーボンニュートラル実現に向けた技術の開発・実証を更に拡充し、脱炭素技術のインフラ海外展開を後押ししていく必要がある。
例えば、2020年 1月に策定された「革新的環境イノベーション戦略」では、エネルギー需給側各分野での温室効果ガス削減効果が示されるとともに、脱炭素かつ安価なエネルギー供給の実現やデジタル技術を活用した社会システムやライフスタイルの変革等に係る技術テーマが盛り込まれている。
今後は一層重要性を増す「持続可能性」、「強靭性」、「安全性」の観点や、現地との「価値共創」を踏まえ、グローバルな産業政策へとシフトすることで、産業競争力を獲得し、インフラ海外展開の拡大と日本の経済成長の両立を実現していくことが大切である。