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2021/01/19

令和3年経済産業大臣年頭所感

(はじめに)

令和3年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

昨年は、新型コロナウイルスが全世界に激震をもたらした一年でした。
新型コロナウイルス感染症の影響により、これまでにお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、健康面や生活面で影響を受けていらっしゃる方々には、心からお見舞い申し上げます。そして、日々、この感染症の終息に向けて力を尽くしてくださっている保健所職員や医療従事者の方々、検査機器や医療用物資の円滑な供給に貢献していただいている事業者の方々に、改めて敬意を表し、感謝を申し上げます。

見えないウイルスと闘うため、人類は今もなお、接触や移動の回避を余儀なくされています。今年こそ、この未曾有の危機を乗り越えるため、私たちは、「新たな日常」に向け、生活様式のみならず、産業構造や社会システムを一気に転換していかなければなりません。

今から約100年前、関東大震災が発生しました。当時、その後の日本の復興のために壮大な都市整備計画を構想した一人の日本人がいます。世界で初めて都市の区画整理を行い、現在の東京の原形を作ったと言われる、後藤新平です。帝都復興院総裁であった後藤氏は、「二度とあのような被害が起きないように」と、100年先の未来を見据えた構想を立てました。あまりにも計画が壮大で、反対にも遭いましたが、それでも自ら前面に立って、計画を押し進めた政治家であったと言われています。

100年後を生きている私たちもいま、目の前の困難を乗り越えるため、後藤氏のようなビジョンと、実行に向けた強い意志を持つべきではないだろうかと思います。これから先に訪れるウィズコロナ・ポストコロナの時代に向け、私たちが抜本的に取組を強化すべき分野は、「デジタル化」、「グリーン社会」への転換、「健康・医療」分野の新たなニーズへの対応、サプライチェーンの再構築をはじめとする「レジリエンス」の強化です。

国際社会からは、米中関係の緊張の高まりや英国のEU離脱などが起こる中で、自由貿易の旗手としてのわが国の行動も期待されています。最重要課題である原子力災害からの福島の復興についても、着実に歩みを進めていかなければなりません.

経済産業省は、こうした課題に対し、一つ一つ、真摯に取り組んでまいります。

 


 

(福島復興・福島第一原子力発電所の廃炉)

今年は、あの痛ましい東日本大震災、そして、東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年目となる年です。これまで、様々な方の御理解と御協力をいただきながら、廃炉は着実に進展し、ようやく本格的な復興も、緒に就いてきました。引き続き、「中長期ロードマップ」に基づき、ALPS処理水の取扱いも含め、安全確保最優先・リスク低減重視の姿勢を堅持しつつ、地域・社会とのコミュニケーションを一層強化しながら、廃炉の取組を進めてまいります。
同時に、事業・なりわいの再建、福島イノベーション・コースト構想の推進も、車の両輪として進めてまいります。そうすることで、福島の地から世の中を変える新たな技術や製品が生まれ、雇用の創出や地元企業の取引拡大など、具体的な成果が地元に届くよう、全力で取り組みます。

 


 

(「2050年カーボンニュートラル」に向けた対応)

今や気候変動問題は、人類共通の喫緊の課題といっても過言ではありません。世界でも、先進国を中心に多くの国や地域がカーボンニュートラルの旗を掲げて動き出しています。昨年、わが国も「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。カーボンニュートラルの実現のためには、高い目標、ビジョンを掲げ、産学官が本気で取り組まなければなりません。わが国が総力を挙げて挑戦し、一つ一つの課題を解決していくことは、新たなビジネスチャンスにもつながる、成長戦略そのものです。昨年末にお示ししたグリーン成長戦略、分野ごとの「実行計画」に基づき、経済産業省としてあらゆる政策を総動員し、「経済と環境の好循環」を作り出してまいります。現在進められているエネルギー基本計画の見直しでも、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、3E+Sを前提とした責任ある議論を行ってまいります。

 


 

(中小企業の足腰の強化)

中小企業・小規模事業者は、全国3千万人を超える雇用を支える、 わが国経済の屋台骨です。しかしながら、人手不足や高齢化といった構造変化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による事業環境の激変、働き方改革や社会保険の適用拡大といった制度変更への対応など、相次ぐ様々な課題を乗り越えていかなければなりません。
引き続き、円滑な事業承継・M&Aの支援や生産性向上のための取組支援、しわ寄せ防止等の下請取引の適正化に取り組むとともに、コロナ時代を見据えた事業再構築の後押しや、中堅企業に成長し海外での市場獲得を目指す中小企業への支援にも取り組んでまいります。

 


 

(通商・対外政策)

昨年、わが国は8年間の交渉を終え、RCEPに署名しました。これにより、世界全体のGDP及び貿易総額の約3割を占める巨大な自由貿易圏が成立することとなります。また、日英EPAについても、EU離脱移行期間の終了後切れ目なく発効することを確保しました。引き続き、自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく国際経済体制を主導していくべく、日米欧の三極貿易大臣会合等も活用し、WTO改革や、大阪トラックの下、「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト」の考えに基づく、電子商取引やデジタル経済に関する国際的なルール作り等を推進してまいります。
経済成長と安全保障の両立も重要な課題です。大国間の技術覇権争いが激化する中で、5G関連施策の推進に加え、半導体やレアアースなど機微技術や重要物資に係るわが国の脆弱性を解消し、優位性を維持・確保します。そのため、関係各省とも連携し、技術開発や統合的な流出防止策を進めます。

 


 

(結語)

今年は、十干十二支の「辛丑(かのとうし)」です。丑は十二支の二番目に当たり、「芽吹きを迎える年」とされています。前回の辛丑にあたる1961年には、それまでの人類の努力の成果が芽吹き、ガガーリンが世界初の有人宇宙飛行を成し遂げました。今回の辛丑は、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った」という芽吹きを迎え、一年延期された東京オリンピック・パラリンピックを開催したいと、心から思っています。
本年も、皆様のより一層の御理解と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

令和3年 元旦

経済産業大臣 梶山 弘志