社告  令和6年1月1日にM7・6の能登半島大地震に見舞われた被災者の皆様に 心よりお見舞い申し上げます。    経済産業新報社

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2021/05/12

今後のエネルギー見通し(第2回) 2050年カーボン・ゼロの達成に向け、政府の思い切った革命的な変化を期待する

ICEF運営委員会
笹川平和財団 顧問
元国際エネルギー機関(IEA)事務局長
タナカグローバル㈱CEO
田中 伸男

今後の日本政府の役割は、もう一度「原子力の平和利用」を国際社会に訴えることである。

1つは、日本の持つプルトニウム在庫の(47㌧)うち余剰部分をIAEA(国際原子力機関)の管理に移すことだ。自国で持っていると、いつか核兵器に転用するのではないかと近隣国に疑われるので、使わない量は国際管理のメカニズムに任せる。

2つめは、朝鮮半島の非核化のプロセスに入り、真剣に貢献していくことだ。例えば、北朝鮮のプルトニウムはわずか40㌔程度。これを日本が買い上げて、六ケ所村で処理し新潟のプルサーマルで燃やせば、日本の貢献が明確になると、私がある講演で話したら、米国の役人が「初めて六カ所施設が役に立つ話を聞いた。米国は大歓迎だ」と言っていた。

日本政府は「世界の平和のための原子力の平和利用」という方針をはっきり打ち出すべきである。その姿勢をより明確にするために、いち早く52カ国が批准してこの一月に発効した「核兵器禁止条約」に参加するべきだ。

現在まで核保有5カ国によるNPT(核拡散防止条約)のメカニズムでは、核拡散の危険は防げない状況だ。いまやインド、パキスタン、イスラエルに北朝鮮を加えて保有国は9カ国に増えた。しかし他方で核能力は持つが兵器は持たない国は50カ国もある。

日本は核兵器を持たない国のリーダーとして名乗りを上げるべき時期に来ている。米の核の傘の下にいようとも、東アジアの核軍縮のために、核兵器禁止条約を批准し、「原子力の平和利用」の旗印を立て、核不拡散型の小型原子炉の技術研究に資金を投入し、世界をリードしていくべきだ。

そして、核兵器持たない国のリーダーとして、そしてまた広島・長崎を経験した被爆国として国連安全保障理事会に常任理事国として入り、平和のために貢献するべきだと思う。

(この後さらに再生可能エネルギーへと田中氏の話は続く。続きは本紙で)