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2024/04/30

サプライチェーン全体での情報共有がキー ~先進企業に聞く「世界の製造業の主流はソフトウェア制御」

 PTC社をご存じであろうか?以前の正式名称は、パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション。米国・ボストン発祥の3Ⅾ CADやPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)をはじめとしたソフトウェアベンダーであり、仏のダッソー、米国のシーメンスと肩を並べる。

 

 昨秋、PTCジャパンの社長に就いた神谷知信氏(社長執行役員)に話を聞いた。

 

 「ジャパンは1992年設立以来、着実に顧客に受け入れられ、日本の先進ものづくり企業がユーザーになって頂いている」。
 主力製品は、機械用3次元CADのCreo(クリオ)とPLMのWindchill(ウィンチル)で、35年以上にわたり、ソフトウェアで製造業を支援している。製造業、航空宇宙・防衛、自動車、電子・ハイテク、ライフサイエンスなどの分野で3万5千社のユーザーを持ち、21億㌦の売上高、世界35カ国で事業を展開、時価総額は何と200億㌦と、製造業に必須のソフトウェアを展開している企業なのだ。

 

 世界のものづくりがデジタル時代になって大きく変わってきているという。
 「ものづくり製品のほとんどがソフトウェア制御になってきており、中身の部品に至るまでソフトウェアの安全基準などをサプライチェーン全体で情報連携して作らなければ製品が完成しない時代になってきている」。
 同社は、ALM(アプリケーションライフサイクル管理)に積極的に投資しておりソフトウェアの、要件管理、バージョン・リリース管理、開発、テスト、運用・保守などを管理するソリューションを提供している。
 同社のウィンチルは3次元CADの設計データをきちんとデータベース内で一元管理しており、安全性の高い情報共有やきめ細かい検索ができるのが強みだ。

「現在、これをSaaSでつなげ、世界中の企業と情報連携ができる仕組みを作っている」。

 そのためのPTCのビジョンは「デジタルスレッド」。循環型(クローズドループ)プロダクト・ライフサイクル・マネージメントの姿を想定している。

 

 

 「企画・設計・生産報告という仮想現実(ソフトウェア)の製品のデジタル表現と、運用・監視・サービスといった現実(リアル)世界における製品の稼働状態をデジタルでつなげループ状に回せば、現場の不具合を設計段階にまで戻して、よりよい製品に仕上げることが即座に実現できる」。

 

 2020年のものづくり白書によると、日本では3次元CADの導入率は少なく、8割方が2次元CAD。設計図は紙によるエクセル管理であり、膨大な設計データの検索が課題だ。製品の部品もほとんどが海外製であり、データ化していないものの管理は大変だ。
「日本の製造業のDXをさらに推し進めたい。今は遠く離れた場所にいてもAR/VRを使って遠隔操作でメンテナンスができる仕組みを用意しています」。 年々減りつつあるベテランの技術をAR/VRに覚え込ませて活用している。

 

 今後の狙いは、航空・宇宙分野と医療と答えてくれた。「製造業のDX化にはまず、経営者のリーダーシップが一番需要だ。次に、日本にはデジタル人材が大幅に不足している。またPM(プロジェクト・マネージャー)も圧倒的に足りていない。」
「したがって、我々のソフトを提供しているパートナー中核企業の育成に重点を置いている」。

 神谷社長の話を聞いていたら、日本はまず3次元CADを導入して、デジタル化を進めていくのが製造業のDXを進める近道なのだと気づいた。

 

(以下、略)

 

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