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CXめざし、全体最適なDXを図れ ~24回目のものづくり白書
第24回目のものづくり白書2024年版が発表された。第1部はものづくりの基礎データや課題、政府の取り組みをまとめ、第2部はものづくり振興施策集の2部構成となっている。
製造業の現況は、日系大手製造業の海外売上比率が53%(米国44%)と、この20年間で急増し、過半を海外で稼ぐ構造となってきている。従業員についても連結ベースで6割が海外現地法人に従事している。
その結果、グローバルでの売上高は大きく拡大し、連結ベースで過去最高益を更新している。しかし、利益率は低水いるにとどまっている。日系製造業は日本から駐在員を繰り込む一方、本国からのガバナンスがほとんどない「連邦経営」となっている。
企業グループ全体を上手くマネジメントできていないことが「稼ぐ力」に影響している可能性が高い。目指すべき姿は経営・組織の仕組み化を図るCX(コーポレート・トランスフォーメーション)。
海外現地法人に従事する人材を含め、経営資源の最大活用を図るため、(日本+現法)という連邦経営から脱却し、内外組織がシームレスにつながる仕組みを整える必要がある。
個別最適化されてきた、ヒト・モノカネ・データに関わる共通基盤を、グローバルで横串しを通して整備していく必要がある、と指摘している。
製造事業者におけるDXは、依然として「個別工程のカイゼン」に関する取り組みが多く、「製造機能の全体最適(設計、開発、調達、物流、営業と連携し、原価管理等と一元管理する)」を目指す取り組みは少ない。
また、新たな製品・サービスの創出により、新市場を獲得する「事業機会の拡大」をめざすDXの取り組みはさらに少ない。産業データ連携では、欧州の自動車サプライチェーン(Catena-X)を中心に、個社や業界を超え、産業規模でCO2排出量のデータを共有し、産業規模でサステナビリティや競争力強化を図る取り組みが進行している。
日本でもウラノス・エコシステムの取組みが始まっているが、産業データ連携への参加の意向はわずかに留まっている。人材育成について、中小企業における製造業の人手不足感はコロナ感染以前より強まっている。
ものづくり企業では2019年にはデジタル技術を活用している企業は5割弱であったが、2023年には8割を超え、活用が進んだ企業は営業利益を伸ばし、賃上げなど従業員の処遇改善も進んでいる。
今回の白書のメッセージは、製造機能の全体最適に向けては、経営戦略の遂行を可能とする「デジタル戦略」を描き、製造現場の業務プロセスの全体像を熟知したうえでのデジタル実装が求められている、としている。
目指すべき事例として、ブリヂストン、三浦工業、Catena-Xを紹介している。今後はDX等成長分野の人材育成、人材育成をは育む教育、Society5.0を実現する研究開発の3本柱が重要だとしている。
具体的には、数理・データサイエンス、AI教育の推進、マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)、産学協同リカレント教育モデルの確立、人工知能、ビッグデータ、IoT、マテリアル、光・量子、半導体技術などの先端的研究開発、ものづくりへの関心を高める教育が打ち出されている。
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