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筑坂高、愛媛大付属の高校生らがインドネシアで植林体験 ~SDGsを体感する国際フィールドワーク 後編
7月後半から12日間、筑波大学附属坂戸高校(筑坂高)の8名と愛媛大学附属高校の3名の一行が国際フィールドワークの実践として、APP社の協力を得て、インドネシアでの紙の生産プロセスや植林現場を見学、植林を体験した。ティッシュペーパーやコピー用紙がいろいろな環境対策を施され、グローバルに日本とつながっていることを大きく体感した。この研修事業が日本イノベーション」融合学会(IFSJ)の知のオリンピック委員会での特別賞に輝いた。(本紙随行記者・高橋成知)
きめ細かい植林事業に驚く
3日目は、植林地の見学。約5・4㌶ごとに区切られた広大な大地に1本1本人手で植え付ける。400人のスタッフのノルマは0・3㌶で一人500本。高校生から矢のような質問。「水やりは?」、「病気は?」などの質問に現地の担当者は丁寧に受け答えをしていた。
「一番の脅威は虫と病気。苗を薬品と一緒に植え込みます。雨季には大量の雨が降ります。4㍍間隔で盛り土をして1・5㍍の幅で植え込み、流されないようにしている」。
病気に強いDNAを持つユーカリやアカシアの苗を4種類ずつ選んで、植林しその性能を検証して次の植林を進めている。ユーカリは1年で5㍍位成長するので4~5年に1回伐採して植え替えているとのことだった。
午後からは植林用の苗を育てている育苗研究所を訪問した。APPは、植林木にユーカリやアカシアを選んでいる。より病気に強い苗をピンセットで、一つ一つ株分けし、さらに培養して人工光合成で成長させ、その研究所だけで毎年1000万本のクローン苗を育てている。
そして、外の苗床に並べて水と日光を浴びせて育て、植林地に出荷する、初めての光景に圧倒されていた。「こうやって大事に育てられているかと思うと、日頃の紙の使い方を考えずには居られません」とある高校生はつぶやいた。
焼き畑農家の事業転換も支援
その後、DMPAプログラムに参加している農家を訪問。焼き畑をしていた時の収入が月2~3万円だったものが、プログラムの支援で空心菜やパパイヤ栽培に転換し、月の収入が4倍になったと、喜びを熱心に語る農民の話に耳を傾けていた。
また、紙製品を結束していたストラップバンドの残りを使って、地元の女性グループが買い物かごを編んでいる現場に行き、実際に作り方を学び、現地のおばさま方から可愛がられていた。
4日目は地域のコミュニティーセンターを訪れ、農園見学と地元の高校生との交流。インスタグラムを使って、すぐに打ち解けあう若者たちの様子が微笑ましかった。帰路の途中で出た夕食のナシゴレン(インドネシア風焼き飯)に下鼓を打ちながらのツアーであった。同行取材はここまで。
次の日は、ジャカルタに戻り、ボゴールにて自然公園見学やボゴール農科大学附属コルニタ高校での体験授業やボゴール農科大学で国際セミナーに参加して帰国する予定だ。
実り多い現場の視察による刺激
引率した同校の吉田教諭は「生徒にはこの研修の消費者になるな。参加者となって強制的に何かを得よう、学ぼうと考えて欲しい」と熱い思いを語ってくれた。
インドネシアはソフトイスラムの国で、文化は「寛容」。朝夜明けとともにアザール(1日5回の祈りの時間のお知らせ)の大音響の声が流れる。ヒジャブの女性も多いが、サラマパギ(おはよう)と声をかけると皆、笑顔でサマサマ(どういたしまして)と返事が返ってくる。
このプログラムに以前、参加した高校生らは、異国の多様な文化の刺激を受け、のちに環境関連を専攻する大学生になったり、インドネシアへの留学生になったり、青年協力隊を目指すメンバーもいる。
2024年の研修に参加したメンバーがどのような未来を築いてくれるのか、このような国際フィールドワークが今の日本の若者の成長に間違いなく役立つことを実感したツアーであった。
<ベランターラ環境保護基金>
2020年からAPPジャパンでは、「森の再生プロジェクト ~いっしょにSDGsに取り組もう~」を進めており、現地で活動するベランターラ環境保護基金に対し、売り上げの一部を寄付している。荒廃の進むインドネシアの森林に、1本1本自生種の苗を植えていく事業で、これまで約5万本の植樹を行っており、森林に生息する象や虎などの動物の生息地の保全にも役立っている。
この活動は、CO2の吸収と生物多様性の保護(ネイチャー・ポジティブ)に貢献できるプラットフォームであり、取引先や消費者が紙を購入することで、その売上の一部が基金に寄付される。苗が育つまでの費用は1本250円から300円(メンテナンス費含む)。コピー用紙やティシュなどにプロジェクトロゴマークがついている商品を購入すると、自動的にこのプログラムに参加したことになる。
(詳細は経済産業新報・本紙で。電子版試読キャンペーン実施中。)