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2021/08/16

特別論説「日本の電機産業の復権に向けたシナリオ」 2030年に百兆円市場へ  日本の半導体、最大で最後のチャンス

日本の電機産業の復権に向けたシナリオ 経産省が果たすべき役割への提言

1. 米中対立とコロナ禍を奇禍に日本半導体復権〆

東京理科大学教授 若林秀樹(経営学研究科技術経営専攻 専攻長)


 

デジタル、カーボンニュートラルで重要性を増す半導体
半導体は、「産業のコメ」と言われてきた半導体は、デジタル化、カーボンニュートラル化の中で、重要性が増している。デジタル時代では、センサで取得した大量データを、メモリで記憶、プロセッサにより計算するが、メモリの大容量化、プロセッサの高速化が求められている。カーボンニュートラルでは、パワー半導体の性能向上が不可欠だ。
このため、PCやスマホだけでなく、自動車など多くの産業で半導体の搭載比率が増え、世界の半導体市場は1990年の5兆円から2020年には50兆円、2030年には100兆円になると予想されている。
この中で、日本企業のシェアは1990年頃の最盛期には50%だったが、現在はシェア10%へ低下、業界では2030年には数%以下となるのではないかとの危機感が強い。

 

ファブレス/ファンドリ化に対応できず
この背景の一つが、2000年以降、業界が、成長分野のシステムLSI中心に垂直統合からファブレス/ファンドリと称される水平分業へ転換したことであり、これに日本企業が対応できなかったことにある。逆に、この変化で、台頭したのが台湾企業だ。1990年代より、世界の生産基地は中国となっていたが、2000年以降、IT産業では水平分業化が加速化、PCやスマホでは、鴻海など台湾EMSが巨大化したのも、半導体における台湾のファウンドリやOSATの勃興も同じ流れである。
2000年以降、米企業は、株式市場の高収益化期待への対応もあり、工場を持たず、金融やソフト、PF(プラットフォーマ)といった設計や企画等の高付加価値な階層に特化、低付加価値のモノづくりは、低コストの台湾や中国に依存する、といったサプライチェーン構造が確立した。GAFAだけでなく、半導体でもブロードコムやQコム、Nビデア等ファブレス企業が高収益高成長を達成、M&Aでさらに巨大化した。

 

サプライチェーン構造変化
このサプライチェーン構造は高効率であったが、危うさも内包していた。世界のサプライチェーンが中国に依存、特にキーデバイスである半導体では、地政学的にリスクのある台湾に依存してしまったのである。半導体は国家安全保障の上でも鍵を握る国家のコメである。これは、かつての日米摩擦の背景でもあるが、中国の台頭、中国製造2025計画発表の中、再び米国においても警戒感が高まった。
(中略)
現在、自動車産業をはじめ、多くの産業で、半導体不足が常態化しており、近因は、昨年10月の旭化成マイクロや、今年3月のルネサスの工場火災であるが、真因は、米中摩擦による制裁やコロナ禍の中でのサプライチェーンの乱れであり、深因は、数年ぶりの世界の産業構造の大変革であろう。

 

最大だが最後のチャンス
実は、これが奇禍となり、日本の半導体産業が復活する最大のチャンスがやってきている。
(全文・続きは、経済産業新報・本紙で)