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2022/02/25

DXの定義の議論は不毛、DX5段階のレベル分け  ~DXの成功と失敗の本質 第2回

住友生命保険では現在、2018年から提供しているDX型健康増進保険「Vitality」をベースとしたデジタル案件を推進している。筆者は5年前から南アフリカ共和国Discovery社との共同事業であるVitalityプロジェクトに携わり、2021年よりデジタルオフィサー(デジタル全般の推進責任者)としてDX推進やDX人材育成を実施中である。

 


 

前回は、DXの本質は「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」を使う経営改革であることを説明した。今回は、筆者が現場で経験した事例を使い「DX」という言葉を定義しないと現場でいろいろなDX解釈が生まれ混乱することを説明する。

 

  • 現場で発生する「多種多様なDX

DXを推進するためには、自社の経営上の目的を明確にした上で、それをどのような手段で進めるかを考えることが必要になる。「自社DXの定義」を理解し、進めるべき「DX」とは何かを具体的に決めることが欠かせない。そうでない場合、人によってDXの意味が異なることになってしまい、たとえば、「上司の言うDX」、「部下の思うDX」、「社長のやりたいDX」、「システム部門のDX」という具合に、各自が異なるものをイメージしてしまいプロジェクトが前に進まない可能性がある。

実際に住友生命の初期のDX検討(3年前)では、最初に社内で意見が分かれた。ある部長は「DXとは既存業務をデジタル化すること」と言い、別の部長は「DXはビジネスモデルを含めた経営改革だから、部長レベルではなく経営問題として方針を決めるべき」と主張した。これを筆者は、ある方法で解決したが、それは後程説明する。

このように「DXをしてみよう」や「とにかくDXを進めよう」という掛け声だけの場合、「既存業務のデジタル化」なのか、「新しいビジネスモデルによる経営改革なのか」で現場が迷い、何から始めるべきかを永遠に議論する状況になる。結果、「とりあえずDXの定義から始めよう」と、これに時間を費やすことになる。

 

  • DXの定義」を永遠に議論する現場

「DXとは何か」を考えるようになった現場では、DXの定義を議論することが目的になってくる場合も多い。DXに似た言葉に、デジタイゼーション、デジタライゼーションがある。これらは既存ビジネスモデル内でのデジタル化を意味し、ビジネスモデルを刷新し、価値創造をするDXとは異なるものであるが、これが定義問題をややこしくする。

 

(中略)

 

  • DX5段階でレベル分けして社内共有する

これを避けるために筆者はDXを広く捉え、ビジネスモデルの変更がともなうか否かなどを軸にして、DXの「5段階」として定義している。

 

DXの五段階

 

(続き・全文は、経済産業新報・本紙で)

 


著者:住友生命 岸和良氏(理事・デジタルオフィサー)