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2022/03/07

DXの取組みは千差万別  ~DXの成功と失敗の本質 第3回

住友生命保険では現在、2018年から提供しているDX型健康増進保険「Vitality」をベースとしたデジタル戦略を推進している。筆者は5年前からVitalityプロジェクトに携わり、2021年よりデジタルオフィサーとしてDXの推進やDX人材育成を実施中である。

 


 

前回はDXの定義の議論は不毛であり、DXを5段階のレベルで分けることで関係者の共通認識を深めることができることを説明した。今回は、DXには唯一無二はなく「各企業のビジネスバリューごとにDXの取組みは異なる」ことを説明したい。

 

  • DXという流行り言葉

DXという言葉が話題になりはじめたのは、2018年頃であったと思う。きっかけは経済産業省の「DXレポート2025年の崖」である。その前から、情報感度の高い人はDXという言葉を知っていたが、日本の多くの企業ではDXという言葉は耳慣れないものであった。

住友生命でも、Vitalityを作り始めた2016年初頭にはDXという言葉は一般的でなく、そのような保険(DX型商品)を開発している自覚はなかった。あくまで歩いたり、運動したり、健康に良い活動をするとポイントが貯まり、ご褒美がもらえる健康増進サービス付保険を開発していたということだ。

しかし、Vitalityをローンチした2018年頃からだったか、DXに関するWeb記事が多くなり、その後は加速度的に増えていった。この流れの大きなきっかけになったのが「DXレポート・2025年の崖」であることは間違いない。SNSやネット記事でいろいろな意見飛び交ったからだ。「2025年の崖」はそれまで有識者の特別なものであった「DX」という言葉を一般の人にも近しいものにし、それから多くのDXに関する書籍が出版された。しかし、これから現場で混乱が始まった。DXの説明がいろいろあり過ぎて、結局何なのかが分からない状態が多くの企業や団体の担当者の頭の中で続いている。

 

 

  • DXという言葉」を使うと上手くいかない

筆者は「DXという言葉」を使うと上手くいかないと思っている。なぜならDXの定義をしっかり考えないで使う都合の良い言葉だからだ。DXの本質は「データ、デジタル、ビジネスの仕掛けを使った経営改善・改革」であり、経営上の改善や改革が先にある。その実現手段として「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」があるというのが正しい構造である。

 

DXの構造

 

DXは企業の経営目的とその手段としての「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」で成り立ち、その具体策は企業のビジネスバリュー(事業上の価値)によって異なる。これは各社毎に千差万別であるゆえ、万能な唯一無二のDXはない。

 

(つづきは、経済産業新報・本紙で)

 


著者:住友生命 岸和良氏(理事・デジタルオフィサー)