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2022/04/16

DXの手段と目的を正しく問う  ~DXの成功と失敗の本質 第4回

住友生命保険では現在、2018年から提供しているDX型健康増進保険「Vitality」をベースとしたデジタル戦略を推進している。筆者は5年前からVitalityプロジェクトに携わり、21年よりデジタルオフィサーとしてDXの推進やDX人材育成を実施中である。前回はDXには唯一無二はなく「各企業のビジネスバリューごとにDXの取組みは異なる」ことを説明した。今回は、DXでの「手段と目的の正しい関係」を考えてみたい。

 


 

 

  • 手段としての「DX」にのめり込む

DXを推進する立場の人はDXの表面的内容や手段ではなく、DXの「本質」を理解しておく必要がある。そうでないと、「AIという手段は導入したけれど、DXで実現すべき成果が出なかった」、「データ分析環境やツールは購入したが、何の分析結果も出ず、ビジネスに活かせなかった」という失敗を招く。

DXは特定の問題解決や経営改善手法を意味するものではなく、「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」を使った業務改善・ビジネス改革のことだ。したがって、導入する企業によって実施内容が異なる。経営は各社それぞれであり、ビジネス改革も各社それぞれである。

DXが上手く進まない事例を調べてみると、その原因はさまざまであるものの、DXの本質が理解できておらず、手段を本質と誤解しているケースが多い。具体的には、「①Google、Amazon、Facebookといった勝ち組企業のビジネスモデルを真似ることがDXであるという誤解」、「②データ分析やロボットといった技術や概念を導入することがDXであるという誤解」、「③リードナーチャリングなどデジタルマーケティングによる顧客誘導方法を導入することがDXであるという誤解」といったものである。

 

  • 誤解の具体例

特に、②や③のケースは新しい概念、用語の種類も多く、かつDX導入成功企業や団体がDXで使っていることが多いため、本質と誤解されることが多くなる。「新しい概念や用語であるデータ分析、SNS、AI、ロボット、自動運転、MaaS、ドローン、5G」などは、どれも魅力的でワクワクする言葉である。

また、「デジタルマーケティング用語であるO2O、OMO、リードジェネレーション、リードナーチャリング」などもビジネスが上手く行きそうな言葉である。しかし、これらは「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」の具体例であり、あくまで手段として使うもので、これ自体が目的にはなりえない。

 

  • DXにおける目的と手段のあり方

本質である「経営課題をデータとデジタルとビジネスの仕掛けを使って解決する」ためには、DX導入を成功させる要素を理解し、「経営目的の設定→手段の選択」を実施する必要がある。企業や団体のトップや導入担当者が、各々自分で、どの領域でどのようにビジネスの改革をするのかを考えることが重要なのだ。

 

▶DX導入に必要な目的と手段(1)

DX図1

 

▶DX導入に必要な目的と手段(2)

DX図2 

 

手段であるAIやデータ分析手法をいくら調べても、経営の方向性を考えなければDXは実現できない。経営課題が人手不足なのか、顧客のニーズを把握できていないのか、商品の差別化ができていないのか、などを理解した上で、どのデジタル技術を使って、どのようなデータを取得するのかを考えることが必要だ。

 

(続きは、本紙・経済産業新報で)

 


 

著者:住友生命 岸和良氏(理事・デジタルオフィサー)