社告  令和6年1月1日にM7・6の能登半島大地震に見舞われた被災者の皆様に 心よりお見舞い申し上げます。    経済産業新報社

トピックス詳細

2022/07/11

技術開発の最前線を歩く 留学生に多くのチャンスと選択肢を ~埼玉工業大学・曹研究室  

デジタル革命が進む中、世界は圧倒的な規模とスピードでイノベーションを創出している。一方、日本ではスタートアップ、オープンイノベーションが低調で、研究費や論文などの指標においても先行きが不安視されている。世界から人材を募って日本の先端技術開発を支える曹建庭(そう けんてい)教授(写真右)の研究室を埼玉工業大学工学部情報システム学科に訪ねた。

 

――研究テーマは?

研究の基礎はAI技術や機械学習だ。ベクトルと行列を一般化した高次的なものであるテンソルを応用して計算アルゴリズムを開発する。開発したアルゴリズムは3つの分野で応用されている。

1つ目は医療分野だ。例えば脳死判定については世界トップクラスの技術を誇っている。現在、学生が可搬型の診断装置開発に取り組んでいる段階だ。てんかんの自動診断や肺炎症状の画像自動診断などの研究も行っている。

2つ目は福祉分野だ。BCI(脳コンピュータ・インターフェイス)は、脳波を信号処理して、車椅子やロボットアームを動かしたり、携帯電話を使用したりすることができる技術だ。身体が不自由な人を手助けするための研究だ。

3つ目はエンターテイメント分野だ。ロボットの設計や自律制御に関する研究を行っている。

 

――今後の研究の目標は?

医療分野では、アルツハイマー型認知症の早期発見や睡眠改善に関する研究を進めたい。認知症は症状が改善しないため、早期発見がキーワードだ。軽度のうちに発見できれば重度化を遅らせることも可能だ。

 

――留学生の進路は?

当研究室には約30人の学生が在籍している。日本人の学部生もいるが、大学院生は留学生だけだ。これまでにはニュージーランドの大学を卒業した中国人留学生を受け入れたこともある。

研究者を目指す学生は論文執筆や国際発表を中心に育てている。企業への就職を目指す学生には実験やモノづくりを中心に指導を行っている。

 

 

(中略)

 

 


 

曹研究室博士課程に籍を置く埼玉工業大学大学院工学研究科情報システム専攻の李博寧さん(写真左)に留学生へのメッセージなどを聞いた。

 

――来日のきっかけは?

中国の大学でソフトウェアエンジニアリングを勉強した。日本の文化に興味を持っていたので、在学時には短期交流生として来日したこともある。大学卒業後、自分の専門知識を更に勉強するため、日本に留学する道を選んだ。

 

――研究生活での苦労は?

来日当初は生活の不便もあったが、今では慣れた。現在は、コロナ禍の影響で海外の学会に参加したり、海外の研究者と交流したりすることが制限されているのが残念だ。

 

――将来の進路は?

BCIに興味があるので、研究者になりたいと考えている。

例えば、複雑な脳波計に代わって、もっと簡単なインターフェイスで車椅子を動かすことができるようになれば、ユーザーにとって利便性が増すだろう。

 

BCI車椅子

BCI車椅子

 

――留学生へのメッセージ

私にとって1番正しい選択は、曹研究室に入ったことだ。

1番大切なことは、自分の興味に合った研究室を選んでほしい、ということだ。研究内容に興味がなければ、研究を続けることは困難だろう。

 

(全文は経済産業新報・本紙で。電子版無料試読できます。)