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2022/08/08

防衛費の対GDP比、議論へ ~2022年版防衛白書を概観する

政府は7月、「令和4年版防衛白書」を公表した。ロシアによるウクライナ侵略や米中の戦略的競争の一層の顕在化など、日本が直面する安全保障環境は大きな変化を迎えている。防衛白書は厳しい安全保障環境下での防衛省・自衛隊の防衛力強化に向けた取組を紹介するものだ。白書を概観する。

 


 

2022年版の防衛白書では、日本を取り巻く安全保障環境について、国家間の相互依存関係が一層拡大・進化する一方、中国など更なる国力の伸長などによってパワーバランスの変化が加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性が増していると特徴付けた。

加えて、テクノロジーの進化が安全保障のあり方を根本的に変えようとしていること、一国のみでの対応が困難な安全保障上の課題が増加していることを指摘した。

また、今年度の白書では「ロシアによるウクライナ侵略」に新しく章が割かれた。ロシアが2月24日にウクライナに対する侵略を開始したことについて、ウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反だと断じ、多数の無辜の民間人の殺害は重大な国際人道法違反、戦争犯罪であり断じて許されないと非難した。

ロシアの侵略を容認すれば、アジアを含む他の地域においても力による一方的な現状変更が認められるとの誤った含意を与えかねない。ウクライナ侵略によって国際的に孤立し、地上戦力を中心として相当の損耗を被っているロシアにとって、中国との政治・軍事的協力の重要性はこれまで以上に高まっていく可能性がある。

 

中国については、過去30年以上にわたって透明性を欠いたまま継続的に高い水準で国防費を増加させているとした上で、東シナ海を始めとした海空域において力を背景とした一方的な現状変更を試みるとともに軍事活動を拡大・活発化させていると指摘した。

また、中国は台湾に対する軍事的圧力とみられる行動を一層強めている。台湾は日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値観を共有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人だ。台湾をめぐる情勢の安定は、日本の安全保障、国際社会の安定にとって重要だと言及した。

極めて高い頻度で、かつ新たな態様でのミサイル発射を繰り返す北朝鮮については、日本の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうと非難した。

 

図1 安全保障環境

 

(中略)

 

 

防衛関係費の2022年度当初予算は5兆1788億円(前年度比553億円増)で、米軍再編などに伴う費用を含めると5兆4005億円で過去最大となった。増額は10年連続だ。

2021年の防衛関係費は対GDP比約1%だ。国防費の対GDP比はG77諸国、オーストラリア、韓国と比較して最も低い。国民1人当たりの国防費はオーストラリア、韓国、英国、フランス、ドイツのいずれも日本の約2~3倍だ。

NATO加盟国は2024年までに対GDP比2%以上の国防支出を達成することで合意しており、2021年は8か国が2%を上回っているという。

 

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