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書評「ウクライナ通貨誕生 独立の命運を賭けた闘い」西谷公明著(岩波文庫刊)
ロシアがウクライナに侵攻して2月24日で1年になる。この戦争は長期化し、第3次世界大戦に発展する危険をはらんでいる。この本がこの戦争の背景を理解するための最良の手引きである、と佐藤優氏は解説する。
著者は、ソ連崩壊後、1992年、ソ連からの独立を目指す経済改革管理委員会の一員として「独立通貨」創造の苦闘に加わったエコミスト。そこで、見聞したゼロからの国作りのルポルタージュである。
本書は2部構成となっており、1部はウクライナの内側から見た国作りの記録である。2部は2014年のマイダン革命(追記Ⅰ)と2022年にウクライナ戦争に際し、同氏が発表した論考(追記Ⅱ)となっている。
ウクライナは、ロシアそのものから独立したかったのだが、旧ソ連構成国にとって国家として自立していくことがどれほど困難なのかを肌で感じた、と著者は語る。勃興するナショナリズム、東西分裂の不安など、現在に続く問題の火種はすでに撒かれていた。
また、「西側はゼレンスキー政権を支持しつつ、戦況をエスカレートさせないよう兵器の補充を慎重に管理するだろう。ウクライナが勝ち過ぎず、負け過ぎないように。ロシアの無法は許せないが核戦争の悪夢は避けなければならない」と。「ロシアのくびき」との闘いは続く。
ウクライナ戦争に関心のある人にはぜひ読んでもらいたい。
「ウクライナ通貨誕生 独立の命運を賭けた闘い」 西谷公明著(岩波文庫刊) 定価(本体1120円+税)
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