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2023/07/07

岐路に立たされ、減速感強める世界経済 ~通商白書2023

 経産省は、令和5年版通商白書を取りまとめた。今回の白書のポイントは、一つめの柱では、分断の危機に直面する世界経済の状況と、それを乗り越えるためには自由で公正な貿易秩序と経済安全保障の両立に向けた取組が重要であることを示した。二つめの柱では、地政学や経済安全保障環境が厳しさを増す中で、わが国企業が重視する投資先は中国からASEANやインドにシフトしつつあり、国内回帰への機運の高まりも踏まえ、信頼できるサプライチェーンの構築が急務であること。過去最大の貿易赤字に直面する中で、鉱物性燃料への輸入依存低減や、企業のグローバル化の推進を通じた稼ぐ力の強化が重要であることを示している。

 

 今年で75回目となる通商白書2023は、今回は動向編、構造編、施策編の3部構成でまとめられている。第1部では世界経済の動向と課題、第2部は日本経済が抱える課題について分析。第3部では通商分野に係る政府の取組みを報告している。

 

 岐路に立たされる世界経済と題した第1部では、世界経済はロシアによるウクライナ侵略による不確実性の高まりやインフレの高進、金融引き締めの加速により減速感を強めている。

 

通商白書(1)

 

 欧米の急激な金融引き締めはグローバル・サウスを中心に債券リスクが上昇、世界経済は米中対立も加わり、不透明化、相互経済依存が進んだ今日、完全なデカップリングは世界経済に大きな損失となる。

 グローバル・サウスは中立を維持することで、自国の利益を確保。WTOが機能不全に陥る中、欧米諸国では対応の検討を加速している。

 

(中略)

 

 世界が難局を迎える中、わが国が取るべき対応では、まず、わが国を取り巻くグローバル・バリューチェーンの強靭化を上げている。地政学や経済安全保障上のリスクは、既に企業意識に大きく影響しており、日本企業が最も重視する投資先は中国からASEANへ変化してきている。

 また、インドを重視する企業も増加し、国内回帰の機運も高まっている。

 

通商白書 (2)

 

 コロナ禍でサプライチェーン(SC)の脆弱性が露呈し、SC全体の把握には取引先とのデータ連携が重要であり、それを通じたSCの統合的な管理実現のための基盤整備を加速させていく必要がある。

 そして、半導体等の重要物資のサプライチェーンの混乱は世界に大きな影響を与えたことから、国内製造拠点の強化を含め、有志国間の連携を強化していく必要がある、としている。

 わが国の成長力強化については、化石燃料の依存低減は貿易構造強靭化の観点からも重要課題である。過去最大の貿易赤字の大宗は鉱物性燃料の輸入価格の上昇によるものであった。

 円安は輸出の好機である一方、約3割の品目で収益増につなげられなかった。但し、価格設定の見直しにより収益が改善される可能性もある。

 そして、企業の海外展開は収益、雇用、賃金、生産性のみならず、地域の輸出促進の観点からも国内経済に貢献できる。「企業の海外展開」と「内なる国際化」を共に強力に推進していくことが重要である、と結んでいる。

 

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