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「分析」の前に「感じる」ことが重要 ~中小企業大学校総長 野中郁次郎氏記念講演
「中小企業大学校研修の意味と価値~イノベーティブなリーダーの育成~」
中小企業大学校の野中総長が九州校開校に寄せて、ビデオによる記念講演を行った。今回はその要約版を紹介する。
今日は、中小企業大学校が提供する研修をはじめとするプログラムの意味、価値について、改めて皆様にお話ししたいと思います。まず、自企業を超えた学びの友や、多様な講師陣との出会いがあります。彼らと共に濃密な時間を過ごし、共体験することで互いに共感しあう関係が醸成されます。重要なのは、「分析」の前に「感じる」ことです。次に、徹底的な対話による知的コンバットです。共感は単なる同感や忖度とは異なります。
相手の視点に立って、全身全霊で。妥協なく対話を重ねる事で、互いに無意識も含めて自分の暗黙知が表出化し、互いにこうとしか言えない、というところまで突き詰めていくと、「われわれの思い、われわれの共感」が醸成されていきます。
知は、暗黙知と形式知の相互作用によって生まれます。重要な点は、起点は暗黙知にあり、共感にあるということです。単に知識を詰め込む、方法論を真似する形式知学習だけからは、新たな価値は生むイノベーティブなリーダーは育ちません。
どんな大企業も、最初は、二人称をベースにした中小企業であったということです。ソニーであれば井深大と盛田昭夫、ホンダであれば本田宗一郎と藤沢武夫です。彼らは、創造的で異質なクリエイティブペアでした。
論語と算盤で有名な澁澤栄一が大事にしていたのは、実は士魂商才でした。農家の生まれの渋沢は、武士道を胸に国家のために命を賭して働きました。国家のために、という覚悟をもって、努力するリーダーを共に育てましょう。現状に安住せず、自己変革する組織であるために、何のために存在しているのかという共通善に向かう、パーバスをアンビシャスに徹底追求するリーダーシップを開発しましょう。
これからの不確実で複雑化する世の中で生き抜くために、想定外の事態が次々と起こる、絶えず動く現実のなかで、しつこくしたたかに失敗をおそれずに試行錯誤し、文脈に応じてその都度の「最善」を目指し、異質な知とスクラムを組みながら、実践を通じて矛盾を解消していく、賢い実践知リーダーを育てていきましょう。
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