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2024/06/24

地球環境対策を強化する建機業界 ~日本建設機械工業会・山本明会長に聞く

 建設機械産業は輸出比率70%、年間約3兆円の貿易黒字を稼ぎ出す、極めて国際競争力のある産業(世界シェア26・1%)である。今後の環境対応にも世界をリードしていく立場にある。そこで日本建設機械工業会の新会長についた山本明氏(コベルコ建機株式会社代表取締役社長、写真)に今後の展望を聞いた。

 

―好調の要因は?

 23 年度の建機産業は前年度予想を上回る好調であった。国内においては、部品、部材の納入遅れの改善や安定した公共投資、民間設備投資が建機需要を引き上げ、堅調に推移した。
 輸出についても、部品等の納入遅れの改善、船舶需給の改善、為替が円安に振れたことで出荷が伸びた。結果、国内外合わせての出荷額は前年度比8%増の3兆7千億円と、3年連続で最高値を更新することができた。)

 

―世界市場で、日本の建機は高いシェアがあるが、その強さの理由。

 理由は2つあると考える。1つは建設機械自体の性能の高さ。安心、安全に使える建機、設備は日本の得意分野で、オペレーターに寄り添った開発が最も進んでいる。
 また、キーコンポーネントである油圧機器の開発・製造には高い技術力と技能が必要とであり、他国が真似したくてもすぐに真似して作れるものではない。
 2つ目はメンテナンスやサービス力の高さ。従来、日本メーカーのサービスマンの技量はグローバルで高く評価されている。
 これにICTを活用した予防保全やアフターサービスを組み合わせることで、従来以上に安定的に機械を稼働させることが可能となる。

 

―この業界は海外市場で強みを発揮している。70%が輸出されているが、日本で生産し80%を輸出する体制は今後も継続可能か?

 日本生産にこだわるより、海外工場でも同一品質の機械を作れる体制や仕組みを構築していくことが重要と考えている。為替変動や鋼材などの原材料価格の上昇、コンテナ船の運賃上昇などの世界情勢を踏まえながら、国内外生産拠点の最適化や海外調達比率の見直しなどを各社それぞれが努力しているところであると認識している。

 

―世界市場の中で中国は今後最大の建機市場となっていくが、中国市場を今後どう考え対応していくのか?

 中国国家統計局によると、23年の実質GDP成長率は5・2%と依然としてプラスを維持している。今後も経済成長とともに建設投資が堅調に推移し、これに伴い建設機械需要も拡大していくとみている。しかしながら、昨今、中資メーカーの台頭が著しく、中国内における外資メーカーのシェアは下降の一途をたどっている。

 

図2仕向先別構成比推移

 

 このような環境下にはあるが、中国は需要そのものが大きいため、日本メーカーが強みを有する分野、例えば環境リサイクル機など、今後成長が見込める市場でビジネスを拡大する機会があると考えている。
 また中国は、生産拠点としても重要な位置付けにあり、そのあたりも踏まえながら今後の動向を注視していきたい。

 

―カーボンニュートラル(CN)への対応は? 

 地球温暖化対策の機運は世界的に高まりを見せ、カーボンニュートラルな社会の実現に向けた取り組みは建機業界においても活発化している。今年度も、建機工内に設置した部会を中心に、CNの勉強会や関係者との意見交換などを継続していく。

 水素燃料やEV用電池に対応した建設機械を市場に投入するには、供給や充電などのインフラ整備に加え、移動・稼働等に係る法整備、さらには低コストなものづくりへの支援やユーザーへの税制優遇などを促進する必要がある。政府に対する要望書は昨年度も提出しているが、引き続き経産・国交両省を始め関係各所に対し、働きかけを行っていく。
 また、建機の遠隔操作や自動運転についても、実用化や普及に向けた取り組みを進める。本格的に導入されれば、働き手の物理的移動が不要になり、作業時間も短縮できるので、カーボンニュートラルの未来に貢献できると考えている。

 

―今後の見通しと国への要望は?

 為替変動や中東地域の更なる緊張の高まりなど、不確実要素が高まっており、今後の見通しが立てづらいというのが本音であるが、会員アンケートでは、24年度は国内、輸出ともに続伸するとの予測が出ている。

 

建機図1需要予測

 

 また、公共投資、民間設備投資、住宅投資ともに前年度比で増加の見方が増えている。日米金利差の縮小が予想されるも、米国市場の勢いはそのままに、国内でも安定した公共投資の継続が予想されるので、現時点では引き続き堅調に推移するものと見ている。
 ICT建機やDX推進、カーボンニュートラルの取り組みの加速のためにはやはり国からの支援が必要と考えている。行政に対しカーボンニュートラルに関する提言を行ってきたことで、国土交通省がGX建機認定制度を制定したことも、競争力強化へ繋がっていると考えている。
 カーボンニュートラルな社会の実現のためには、新しい技術を採り入れた機械の普及が必要となるが、それには法制度面、インフラ面ともに国の後押しが重要である。経済産業省、国土交通省など関係各社に働きかけを続けながら、連携を強めていきたい。

 

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