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2024/11/12

グローバルにつながる”紙“の重要性に気づく ~12名の高校生による国際フィールドワーク(前編)

 さる7月28日から8月8日までの12日間、筑波大学附属坂戸高校(筑坂高)の9名(卒業生1名を含む)と愛媛大学付属高校の3名の一行が国際フィールドワークの実践として、インドネシアでの紙の生産プロセスや植林現場を見学、植林も体験して、普段、身近にある、ティッシュペーパーやコピー用紙がいろいろな環境対策を施され、グローバルに日本とつながっていることを大きく体感した。この研修事業が日本イノベーション融合学会(IFSJ)の知のオリンピック委員会での特別賞に輝いた。(経済産業新報・高橋成知)

 


 

今年で5回目

 

 引率したのは、同校主幹教諭の建元喜寿氏。「最近の高校生はネットでの知識は豊富だが、現場の経験が少ない。グローバルに作られている紙の現場を見て回り、学んで来て欲しい」。筑坂高は2015年に文科省からスーパー・グローバル・ハイスクール構想の指定校に選ばれていた。元JICA職員でインドネシアに地の利のある同氏が、学生のインドネシア研修先として駐日インドネシア大使館よりAPP社を紹介されたことからこのプロジェクトがスタートしている。

 15年、17年、19年とインドネシアを訪れ、APPの工場、植林地、保護林などを見学していた。コロナ禍、昨年3年ぶりにプロジェクトが復活、今年も同様のプログラムが実施された。

 

 7月29日、羽田空港を経った一行は、約3500マイル離れたインドネシア・スカルノハッタ国際空港に到着、時差は2時間ほど。疲れを見せずに、まずAPPの本社を訪問、L.アチャナ広報責任者から歓迎のあいさつを受けた。
 同社は、中国、インドネシアに10数カ所の生産拠点を持ち、年間約2000万トンの紙・板紙の生産能力がある、世界最大規模の総合製紙メーカーであり、世界150カ国に紙製品を提供している。

 

森林火災を防止するためのプログラム

 

 同社は260万㌶(関東地方の約8割)の植林地・保護林を管理している。最大の脅威は「森林火災」。パーム油の価格高騰から、違法な焼き畑を行うパームヤシ畑の拡大が止まらない。同社では、DMPA(森林火災防止のための地域活性化)プログラムを実施して、焼き畑農業からの転換を進めている。
 その結果、保護林減少比率を5%(2012年当時))から、0・17%に抑えている。一行は、同社内にある森林モニタリングルームを見学した。政府が提供する降雨予測、風向き、ホットスポット(火災が疑われる地点)、情報を24時間体制で、収集・分析、現地消防隊(2200人)に現場確認や消火活動の指示を出している。
 4台の大型モニターを監視する現場を見た高校生からは「1企業が行うレベルではなく、国の事業を肩代わりしているようだ」と広範なインドネシアの地図を見ながら驚きの声を上げていた。

 

APP写真1
森林火災のホットスポットを監視するモニタリングルーム

 

APPの巨大工場を視察

 

 2日目は、スマトラ島プカンバルにある、APPが誇るリアウ州インダ・キアット・ペラワン工場の見学。2000㌶の敷地に6000人が働いており、年間259万㌧のパルプ製品と240万㌧の紙製品を生産している。世界の主流であるECFパルプ漂白設備への転換も終えている。
 伐採された木材のヤードから、木をチップ上に砕き、蒸してから繊維質を取り出し、パルプを作る。パルプは工場内の大型抄紙にかけられ、紙となってジャンボロールになる工程を見学。無人で動いているマシンを数名がモニター映像で監視している様子をみて、一同、驚嘆の声を上げていた。

 

APP写真2
無人で動く巨大な製紙製造マシン

 

 その後、ロールが裁断され、コピー用紙として出荷される工程、工場内にある出荷港までを見学。その後、スルタン・シャリフ・ハシム森林公園での植樹セレモニー、記念植樹を行ってから、絶滅危惧種となっているスマトラ象の保護地域で本物の象との触れ合いを体験した。象にサトウキビの茎をあげたり、体に触って写真を撮ったり、人生で初めての経験を楽しんだ。
(次号に続く)

 

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